%20(1).png?fm=webp&w=1024)
人手不足が深刻な課題となっている建設業界において、外国人材の受け入れは、もはや避けて通れない経営テーマだ。2027年には技能実習制度に代わる新制度「育成就労」への移行も控えており、共生のあり方を模索する経営者は多い。
しかし現場では、「指示がうまく伝わらない」「お互いにストレスを感じてしまう」といったコミュニケーションの壁に直面し、頭を抱えるケースも少なくない。
前回は技能実習生の受け入れをテーマに取り上げた。今回は視点を変え、現場における言葉の壁に焦点を当てる。
今回の取材では、技能実習生や特定技能外国人向けにオンライン日本語教育を提供する、むすびば株式会社の代表・相原恭平氏に話を伺った。現場の安全を守り、共に働く仲間として信頼関係を築くための、具体的かつ持続可能なアプローチを探る。

むすびば株式会社
代表取締役 相原恭平氏
1997年生まれ。大学時代に海外ボランティアを経験し、外国人技能実習生の失踪問題を解決すべく、2021年にむすびば株式会社を創業。建設・介護現場に特化した実践的な日本語教育を提供し、3年間で180社以上に導入されている。「人と人のよい関係性を築く」をミッションに、現在は外国人児童やその家族も対象とする地域共生型の日本語教室事業を展開している。
▼むすびばHP▼
目次
悩みの真因は「悪意」ではなく「お互いの戸惑い」
相原氏がこの事業を始めた原点は、学生時代にベトナムでボランティアとして日本語を教えた経験にさかのぼる。当時、日本のアニメや技術に憧れ、日本で働くことを夢見ていた若者たちが、来日後に「現場でのコミュニケーションがうまくいかず、自信をなくしている」という現状を知り、強い衝撃を受けたという。
当初、相原氏は「受け入れ側に問題があるのではないか」という仮説も持っていたが、実態を把握するために徹底したヒアリングを重ねた。
相原氏が相談に乗った外国人は延べ3,40人以上にのぼる。さらに、受け入れ側の建設会社も10〜20社ほど直接訪問し、経営者や現場責任者の本音に耳を傾けた。
そこで見えてきたのは、どちらか一方が悪いという単純な構図ではなく、双方がコミュニケーションの取り方に戸惑い、疲弊しているという構造的な問題だった。
「会社側も、決して悪意があるわけではありません。むしろ、『安全のために厳しく教えたいが、言葉が通じないために語気が強くなってしまう』『何度も同じミスをさせてしまうのが忍びない』と、現場の親方や経営者も深く悩んでいました。
一方で、日本語が十分でない若者は、注意されている理由は分かっても、どう改善すべきかを尋ね返すことができません。この『ボタンの掛け違い』が現場の空気を重くし、最終的に失踪や離職といった悲しい結果を招いていました」
相原氏は、この「言葉の壁」を解消することこそが、建設現場における「共生」への第一歩であると確信したという。
教科書どおりの日本語と現場のギャップ
一般的な日本語学校で教える「きれいな日本語」と、建設現場で実際に使われる言葉との間には大きな隔たりがある。現場で本当に機能する日本語を教えるには、実際に現場で使われる言葉を用いる必要がある。
- 「丁寧語」よりも「命令・禁止表現」を優先する
「危ないので触らないでください」という長い表現では、緊急時に瞬時に伝わりにくい。「ダメ」「触るな」「止まれ」といった短い言葉を、反射的に理解できるようにする必要がある。 - 「ミリ単位」の表現を共通言語にする
「7500(ナナゴー)」といった独特の数え方や、「ツラ」「パッキン」「番線」といった専門用語。これらを「現場の公用語」として真っ先に身につけなければ、図面の内容を共有することすら難しくなる。 - 「はい」で済ませず、「復唱」を徹底する
「わかった?」という問いに、彼らは敬意を示すために「はい」と答える。理解できているかを確認するには、「今から何をすべきか、確認させてください」と促し、作業内容を自分の言葉で復唱してもらう必要がある。
1授業あたり1人1,000円。中小企業が「投資」として継続できる仕組み
どんなに優れた教育も、継続できなければ意味がない。特に中小の建設会社にとって、教育コストは大きな懸念材料だ。そこで、むすびばでは、1授業あたり1人1,000円(税抜き)という、価格を抑えた設定を維持している。
「建設業界は数人規模の会社も多く、多額の教育費を捻出するのは難しいです。しかし、言葉が通じないことで起きる事故やミスの損失、そして何より『人が定着しない』というリスクを考えれば、月々数千円の教育費は、現場を安定させるための最も効率的な投資になるはずです」
オンライン授業はすべて録画され、その内容は報告書として会社側にも共有される。本人がどれくらい上達したか、どのような課題があるかを経営者が把握できる仕組みも、現場の安心感につながっている。
経営者が現場で共有したい「やさしい日本語」
外国人材に日本語を学んでもらうのと並行して、受け入れ側の日本人スタッフにも「伝え方」の工夫が求められる。相原氏は、現場で意識したい「やさしい日本語」のコツをこう説く。
【現場で意識したい3つの鉄則】
- 文章を短く区切る
「あれをやってから、これを持ってきて」ではなく、「まず、あれをやる。次に、これを持ってくる」と分ける。 - 具体的な名称で呼ぶ
「あれ」「それ」といった代名詞は避け、「ハンマー」「図面」など、物の名前を明確に伝える。 - スピードとトーンを意識する
相手のレベルに合わせ、はっきりと、一語一語を区切って話す。
「親方も日々の業務で忙しく、余裕がないのは理解しています。しかし、こうした少しの配慮が手戻りを防ぎ、結果として現場全体の負担を減らすことにつながります」と相原氏は指摘する。
また、日常の何気ないコミュニケーションが、日本語の上達を後押しする。「昨日の夜は何を食べた?」といった何気ない会話が、彼らの「話すハードル」を下げるのだ。
働く仲間として、地域の隣人として
2027年の制度変更を見据え、外国人材との向き合い方には、これまで以上に長期的な視点が求められる。相原氏は、彼らを単なる「労働力」としてではなく、共に地域を支える「仲間」として捉えてほしいと締めくくった。
「言葉が通じるようになれば、彼らは一人の人間として、自分の考えや夢を話してくれるようになります。そして、仕事が終われば、同じ地域に住む隣人でもあります。彼らが日本に来てよかったと思える環境を整えることは、人手不足に悩む建設業界の未来にもつながるのではないでしょうか」
「言葉」という架け橋を一つひとつ丁寧に築いていく。その地道な積み重ねが、次代の建設現場を支える基盤になるのではないだろうか。
「現場の言葉の壁」を、共に乗り越えるヒントを探してみませんか?
記事に登場したむすびば株式会社の代表・相原恭平氏が、2026年開催の「建設業働き方フォーラム」に登壇決定。 「育成就労」新制度への移行を目前に控え、外国人材が真に定着し、安全に活躍できる現場をどう作るのか。180社以上の現場を支えてきた相原氏だからこそ語れる「綺麗事ではない共生のリアル」を、直接お届けします。
「言葉が通じない」という戸惑いを、「共に働く喜び」に変える具体的なアプローチが、ここにあります。
.png)

助太刀タイムズ編集部
助太刀タイムズ編集部
助太刀タイムズ編集部です。 最新のイベントやノウハウだけでなく建設業にかかわる人にとって価値のあるコンテンツをお届けしていきます。

%20(1).png?fm=webp&w=1024)








.png?fm=webp&w=1024)

.png?fm=webp&w=1024)
.png?fm=webp&w=1024)








.png?fm=webp&w=1024)


.png?fm=webp&w=1024)
.png?fm=webp&w=1024)


