今回は建築現場で役立つ建築確認申請について解説したいと思います。
目次
そもそも建築確認申請とは
まず、建築基準法とは、戦後の昭和25年に、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護、公共の福祉の増進に資することを目的とする(建築基準法第1条)法律となります。その為に建築物の新築、大規模な改修、模様替え、用途変更などの建築する場合、該当する工事の着手前に、都道府県や市の建築主事や指定確認検査機関に建築確認の申請書を提出して、確認済証の交付を受けなければならない(建築基準法第6条)とされています。
建築基準法と関連する法規
建築物は建築基準法に準じて設計されています。また、都市計画法、消防法、建築物省エネ法、バリアフリー法、駐車場法、下水道法、浄化槽法、騒音・振動規制法、都道府県が独自に定めた条例などなど、関連する多くの法規も準拠する必要があります。建築確認申請はこれらの法規、基準に適合しているかの確認行為となります。
その他の関連する法規については、各官庁の窓口と個別協議を行い、その内容に準じて設計図面並びに申請書類を作成しているのです。
建築確認申請が必要な建築
建築確認申請が必要な建築は建築基準法で以下の1号から3号に該当する建築物での建築、大規模の修繕、大規模の模様替に関わる工事を行う場合と定められています。(建築基準法6条1項)
1号, 特殊建築物(建築基準法別表第1)で床面積の合計が200㎡を超えるもの
2号, 木造で、階数が3以上、延べ面積が500㎡を超えるもの、高さが13m超
若しくは軒高9mを超えるもの
3号, 非木造で、階数が2以上、延面積が200㎡を超えるもの
また、上記の1号から3号以外のものは4号(一般的に4号建築物と言われる)となり、都市計画法の都市計画区域内、準都市計画区域内、景観法の準計画地区内、都道府県知事が指定する区域内の建築物も建築する場合も必要となります。
審査機関と審査の内容、その期間
従来、建築確認申請は、都道府県や市の建築主事が公の権威を持って確認を行ってきました。1998年に政府の規制緩和により民間開放が行われ、指定確認検査機関でも建築確認と検査が行われるようになりました。これにより、建築確認の審査期間の短縮化、事前相談も容易になる等の効果も得られました。
建築確認は主に建築基準法で規定する建築物の敷地、設備、構造、用途について審査されます。例えば、建築物の敷地は幅員4m(特定行政庁が指定する区域では6m)以上の道路に、2m以上接続されていなければなりません。テレビでのリフォーム番組では建築確認申請を伴う新築や改築が出来ない古い建築物を、劇的にリフォームしているのです。
建築確認申請にかかる期間は、規模や構造により異なります。住宅などの木造2階建ての住宅であれば7日、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物場合は35日と決められています。ただし、指摘により審査が出来ない場合は期間が延期されます。その為、建築確認申請に手慣れた設計事務所が、建築主事や指定検査機関との事前協議を十分に行い、審査指摘の少ない申請を出すことが大切となります。
消防同意
建築確認申請期間中に建築基準法の審査が完了すると、消防法の適合について建築場所の所轄消防署の同意審査が行われます。主に消防設備についての確認となります。必要となる消防設備は、建築物の用途、規模により異なります。その為、建築確認申請の審査内容との整合性を図る必要もあります。
消防同意は防火地域、準防火地域内にあり、一戸建ての住宅でない(もしくは一戸建てではあるが、住宅以外の用途の面積が延べ床面積の1/2以上で、50㎡を超える)ものが対象となります。7日以内となりますが、4号建築物の場合は3日となります。
構造計算適合性判定と建築物エネルギー消費性能適合性判定
建築確認申請と同時に審査を受けなければならないものとして、構造計算適合性判定と建築物エネルギー消費性能適合性判定があります。
構造計算適合性判定は平成17年の耐震偽装事件をきっかけに、平成19年に導入されたものです。一定規模以上の建物は、第三者機関の指定構造計算適合性判定機関が、構造計算が適性の行われていることを確認します。
また、建築物エネルギー消費性能適合性判定は、近年の建築物におけるエネルギーの使用量の増加、社会情勢により制定されたものとなります。300㎡以上の非住宅建築物で新築、増改築を行う場合に必要となります。
どちらも確認が済まないと建築確認済証が発行されません。
建築現場で守らなければならないこと
建築確認の申請書類で法規に準じた内容は、建築現場でその通り作る必要があります。
確認申請が下りる前の着工はNG
工事はこの確認申請の審査が完了し、確認済証が発行されてからの着工となります。この場合の着工とは建築確認に提出した申請書の内容に関する工事を指しています。よって、基礎工事の準備のための掘削や山留工事、敷地周囲の給排水設備工事も対象となります。
確認済証の発行前にこれらの工事を行った場合には、建築基準法違反となり、行政指導を受けて施工したものを解体する様な指導を受けるこがありますので、絶対に行ってはいけません。
守らなければならない使用材料の性能確認
建築基準法の中に「主要構造部」という言葉(建築基準法第2条第5項)があります。これは構造耐力上の主要な部分(建築基準法施行令第1条3項)とは別の意味で、耐火、準耐火建築物の場合、防火上主要な部分を言います。
その為、柱や梁以外に、防火区画の壁や床、屋根、階段の仕様については、建築確認申請の重要な審査範囲となります。使用材料は必ず守らなければならず、製造者の性能についても確認記録を残す必要があります。
変更手続き、工事中断も?
建築工事で建築主の要望による変更や、合理的に作ろうと変更する場合、建築確認の申請内容の変更に当たらないか確認する必要があります。
例えば、間仕切りを変更する場合、構造や防火上の主要構造物に該当するものや、断熱材の性能を上げて薄くする場合、再度、建築確認の申請や、適合性判定を提出する必要になることもあります。
その間、建築工事が中断することもありますので、建築確認申請や適合性判定の内容を確認することが大切です。
中間検査、完成検査前に準備しておくこと
建築確認の申請をした建築物は、建物の完成時や工事途中に検査を受ける必要があります。検査は建築確認の申請内容に照らし合わせて行われます。
検査は工事監理の状況、認定品などの製造者認証、完成時に隠蔽されてしまうコンクリート内の配筋状況、天井裏の防火区画の貫通部の施工状況の写真、非常照明の照度や排煙、換気の風量等の測定結果、防火シャッタ等の動作確認等を行うので、事前に書類や写真の準備しておきます。
検査の当日はこれら書類や写真の確認と、現地による目視、測定、動作確認の試験を行います。大規模の建築現場で滞りなく検査を進める為には、検査の順路、班分けを決めておくことが大切となります。
参照:新日本法規
「建築申請memo2022」
「建築消防advice2022」
建築確認申請が不要な建築とは
建築確認申請が不要な建築物もあります。その一部をご紹介します。
都市計画区域外の4号建築物
都市計画区域内のいわゆる4号建築物は、建築確認申請は不要となります。都市計画区域は各自治体のホームページで確認が出来ます。
防火地域・準防火地域外の10㎡以内の増築 物置やカーポートの設置の注意点
よく10㎡以下の増築は建築確認が不要と言われますが、それは防火地域・準防火地域外に限られます。特に住宅の新築の後に、鋼板製の物置やカーポートを設置することもありますが、注意が必要です。
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201_20220531_504AC0000000044
仮設建築物
工事用の事務所や詰所、資材置き場は建築確認申請を出しているのでしょうか。この場合、工事用の仮設建築物として工事期間中は建築基準法の確認申請を要しない建築物(建築基準法第85条第2項)となっています。建築工事が終われば、撤去が必要となり、そのまま使い続けると違法建築物となります。
また、震災などにより応急的に設置する仮設建築物(建築基準法第85条第1項)は、建築基準法の一部適用除外(建築基準法施行令第147条)を設けられ、建築確認申請の提出は求められておりません。
ただし、サーカスのテント小屋等の仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗等の仮設建築物でも、建築基準法の一部適用除外(建築基準法施行令第147条6項)は設けられているものの、建築確認申請は必要となります。
その他の建築物
最近、貨物用のコンテナを利用した店舗や、サーバー機械、グランピング用のテント等、建築物に該当し、建築確認申請が必要か判断が分かれるものが多くなっています。困ったときは、まずは、設置する自治体の建築主事に相談してみることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか、少しは建築確認申請をご理解いただけたでしょうか。建築基準法は関連する法規も多くあります。現代の大型化した複雑な建物が多くなっています。判断に迷ったらまずは、建築確認の申請図書の確認、監理者や設計者への相談から初めてください。
また、建築確認申請が不要な建物の場合、どんなものでも良いということではありません。建築基準法は冒頭にも記載した通り、国民の生命、健康及び財産の保護、公共の福祉の増進に資するために法規に準じて建築しなければなりません。
皆さんもより良い建築物を一緒に作っていきましょう。
文/白熊 次郎
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