慣性とは、物体が外力の作用を受けずに自由運動している時に、その物体は速度を変えずに運動を保つという性質のことである。慣性の法則はガリレオが発見して、ニュートンが法則としてまとめた。
質量が大きいと慣性は大きくなる。物体は運動を同じように保ち続けようとする性質がある。そのため、質量が大きいと物体の速度を変化させにくくなり、加速しづらくなる。
建築においては、慣性が作用するわかりやすい例として、クレーンの玉掛け作業がある。荷を吊った状態のクレーンが急停車すると、慣性が作用して荷が大きく振れる。荷を吊った状態でクレーンが急発進した場合でも、荷が取り残される状態になるため、荷振れが起きてしまう。
建築物においては、地震が起きた時に慣性力が作用する。地震の揺れとは逆の方向に荷重が掛かり、特に床への作用が大きい。建築物の重量が重いほど、慣性力が大きくなる。
地震により建築物に作用する力のことを地震力という。特に横に揺れる地震力は、地盤が揺れることで働く慣性力といえる。
木造建築の場合、柱や梁を頑丈に固定させることなどが地震力への対応となる。鉄骨造の建築物でも、耐震フレームの採用などで対処できる。免震ダンパーや免震ゴムの設置も、地震による慣性力への防止策となる。