矩(かね)とは、直線、直角の意味を持ち、建設業界では直角に曲がった物差し、指矩(さしがね)、曲尺(かねじゃく)、定規のことを指します。指矩は大工道具の一つで、直線を引く、寸法を測る、直角を出すなど、大工仕事の基本をなすものです。表面には尺貫法(しゃっかんほう)の、寸(すん)、分(ふん)、厘(りん)、裏面には角目(かくめ)と丸目(まるめ)と言う2つの目盛りが刻まれています。角目には表面の数字に2の平方根(1.4142…)を掛けた数字が記載されており、丸太から切り出される角材の寸法が一目で分かる様になっています。
丸目には表面の数字に円周率(3.14159…)を掛けた数字が記載されており、丸太の直径を測ることで、周囲の長さが分かる様になっています。日本の木造建築は、縦、横、斜めの木材が複雑に組み合って建てられていますが、大工は指矩一本で屋根の勾配や、放射線状に配置した垂木、屋根に反り、部材の接合部の仕口などを作り出します。
勾配は1尺(10寸)に対する高さの寸で表わし、三角関数を用いずに垂木の長さを計ることができます。指矩を用いた計算技術を規矩術(きくじゅつ)と言い、平方根、微分積分までも算出することが出来ると言われています。