実は大工になるには資格を取得する必要がありません。ただし、大工が資格を取得することで得られるメリットは多くあるので、持っておいて損することはないでしょう。
大工の場合、特に以下の資格を取得するのがおすすめです。
・建築大工技能士
・木造建築物の組立て等作業主任者
・木造建築士
・二級建築士
・建築施工管理技士
そこで今回は、大工の資格を取得するメリットを解説するとともに、大工が取得した方がいい資格について紹介します。
目次
大工とは
大工とは、建築士が作成した設計図をもとに、建築物を組み立てる職業です。主に木造建築物の骨組みや一般住宅の屋根、天井、床の下地などをつくる仕事を担当します。
大工の仕事を始める際には、見習いからスタートするのが一般的です。そして、一人前の職人になったあとに職人たちをまとめる親方として現場作業をマネジメントしていきます。
大工の雇用形態は、工務店で雇用されている大工、作業時間単位で報酬を得る常用大工、坪当たりの単価に対して報酬を得る手間請け大工などさまざまです。独立して一人親方として活動している大工も少なくありません。
以下の記事で具体的な大工の仕事について解説しております。
大工の仕事は具体的に何をする?大工の仕事の種類は
大工になるには資格は必要?いらない?
基本的に、大工になるためには、建築関係の資格を取得する必要はありません。
前述した通り、建築会社に大工として雇用されるか、個人事業主で活躍する棟梁の元などで、見習いから大工を始めます。「未経験者」や「やる気のある方」であれば応募できる大工の求人も多く、資格の保有は問われていません。
ただし、資格を取得することで得られるメリットが多いのも事実です。次では、大工が資格を取得することで得られるメリットを紹介します。
大工が資格を取得するメリット
大工になるためには資格を取得する必要はありませんが、資格を保有しておくことで多くのメリットが得られます。
ここでは、大工が資格を取得するメリットを3つ紹介します。
受注数の増加につながる
大工が資格を取得するメリットとして、受注数の増加につながりやすい点が挙げられます。
建築の仕事は、作業によって資格が必要とされていることも多く、資格を持つことで頼まれる仕事の幅も広がります。
特に個人事業主として働いている大工は、ほかの大工と差別化を図るためにも、資格を保有することで取引先からの信用性も高まります。大工は技術やスキルがものを言う仕事ですが、自分が持っているスキルを最大限アピールするためにも、資格を取得しておくことが大切です。
活躍の場を広げられる
大工としての活躍の場を広げたい場合は資格が役立ちます。なぜなら、大工の実務経験とともに、建築関係の資格を取得することで自分の市場価値を高められるからです。
たとえば、工務店に雇用されている大工の場合、新しい仕事を任されたり割り当てられたり、ほかの若手よりも高度な仕事を担当できたりといったチャンスを得られる可能性があります。
ほかにも、大工が建築士の資格を取得すれば、自分で図面を作成することまではしなくとも、設計士と意見を交わし、スムーズに建築作業を進めることができるようになります。また、仕事を依頼する側からしても、設計に詳しい大工の方が安心して仕事を頼めるでしょう。
転職機会を得られる
現在勤めている工務店から、新しい職場を探したい場合や、昇給を狙って転職活動を行う場合にも、資格取得が重要なポイントとなります。建築関連の様々な資格を保有していることで、市場における自身の人材価値が高まり、企業が「欲しい!」と思える人材になることができます。
また、一人親方として個人で働いている大工の方も、資格を取得しておくことで企業から声がかかる可能性もあります。特に今後は、建設キャリアアップシステムの普及などで個人が保有している資格をアピールする場が増えてくると考えられるので、このような場合にも資格を持つことで有利になるといえます。
※建設キャリアアップシステムについてはこちらの記事を参照ください。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?技能者・事業者のメリット、料金、登録方法などを解説
現時点で転職する予定がない場合でも、資格を保有しておくとあとで活きてくるので、資格取得に励む価値はあるでしょう。
大工におすすめの資格一覧
大工としての人材価値を高めるためにも、自身のキャリアを考慮しながら、資格を取得していきましょう。
最後に、大工におすすめの資格や、それぞれの取得難易度を解説します。
建築大工技能士
建築大工技能士とは、木造建築工事に関わる仕事に必要な技能分野の国家資格です。都道府県の職業能力開発協会が試験を主催しており、難易度別に1級・2級・3級と分けられています。
建築大工技能士の資格を保有していることで、客観的にスキルが評価されるため、工事を発注する企業からの信頼を獲得できます。ただし、級ごとに受験資格が決まっています。以下がそれぞれの資格の特徴です。
この資格は都道府県職業能力開発協会が実施しています。資格概要や申し込み方法については、ホームページから確認できます。
1級建築技能士
1級建築技能士は、実務経験が7年以上の大工を対象とした試験です。試験内容は、振隅木小屋組の平面図、振隅木及び配付たる木の現寸展開図を作成したうえで、加工組立を実施します。建築大工技能士で最も難しい資格です。合格率も平均20%台です。
2級建築技能士
2級建築技能士は、実務経験2年以上の大工を対象とした試験です。試験内容は、柱差し小屋組の平面図、振たる木の現寸展開図を作成したうえで、加工組立を実施します。2級建築技能士の難易度もハードルが高いです。、20〜30%台となっています。
3級建築技能士
3級建築技能士は、実務経験6ヶ月以上の大工を対象とした試験です。試験では、材料への墨付け、桁、はり、つか、むな桁及びたる木の加工組立てを実施します。1級・2級と比較すると難易度が低めです。、合格率も80%台と受験しやすいのが特徴です。
木造建築物の組立て等作業主任者
木造建築物の組立て等作業主任者とは、労働安全衛生法で定められた作業主任者のことです。工事現場の作業主任者として、労働災害を防止するための管理や、労働者の安全を確保する役割があります。
「軒の高さが5m以上の木造建築物の構造部材の組み立て」や「屋根の下地や外壁下地の取り付け」を実施する際には、木造建築物の組立て等作業主任者を配置しなければなりません。
木造建築物の組立て等作業主任者の資格を取得するためには、都道府県で実施する「木造建築物の組立て等作業主任者技能講習」を修了する必要があります。また、木造建築現場における3年以上の実務経験や、教育機関における土木・建築学科の卒業も求められます。
木造建築物の組立て等作業主任者は建築業労働災害防止協会(建災防)が実施しています。
木造建築士
木造建築士は、各都道府県が交付する国家資格です。
木造建築の設計に必要な資格ですが、木材の組み立て作業が中心となる大工でも取得を推奨します。将来的に建築士として活躍したい場合には、木造建築士の資格を活用できるためです。
ただし、木造建築士を取得するためには、一定の受験資格を満たす必要があります。受験資格を得られる方法は以下のパターンに分かれます。
・大学、短期大学、専門学校で指定科目の単位を取得した上で卒業
・建築関係の指定科目を学修できる高等学校・中等学校を卒業(試験合格後に免許登録するには高校卒業で2年以上、中学校卒業で3年以上の実務経験が必要になります)
・建築関係の指定科目を取得していない場合は、7年間の実務経験
なお、木造建築士の合格率は30〜40%です。
木造建築士の試験は、建築技術教育普及センターのホームページから申し込みできます。
二級建築士
二級建築士は木造建築士同様に、各都道府県で交付している国家資格です。木造建築士よりも業務範囲が広く、戸建て住宅の設計や工事の監理を行うことができます。
直接的に大工と関連する資格ではありませんが、大工の経験を活かして、建築士への転身を考えている方にはおすすめです。
二級建築士の受験資格は木造建築士と同様、以下になります。
・大学、短期大学、専門学校で指定科目の単位を取得した上で卒業
・建築関係の指定科目を学修できる高校を卒業(試験合格後に免許登録するには2年以上に実務経験が必要になります)
・建築関係の指定科目を取得していない場合は、7年間の実務経験
木造建築士よりも勉強しなくてはならない範囲が広いため、合格率も例年25%前後と比較的難易度は高くなっています。
二級建築士の試験も、建築技術教育普及センターのホームページから申し込みできます。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、工事現場の管理に関する国家資格です。工事監理、工事のスケジュール調整、工事資材の発注など、現場を監督する際に必要となります。
1級と2級に分けられています。合格率は両方とも40〜50%です。難易度自体はそこまで高くはないものの、最終学歴に応じて実務経験が必要で、指定学科を卒業していない場合には、最大4年以上の実務を経験しなければなりません。
建築施工管理技士は、日本建設情報センターのホームページから申し込みできます。
また、2級建築施工管理技士についてはこちらの記事でもご紹介していますので、参考にしてみてください。
まとめ
大工になるために、資格を取得する必要はありません。しかし、資格を取得することで得られるメリットは大きいので、これから仕事の幅を広げていきたい方は取得しておいた方がいいでしょう。
本記事で紹介した大工におすすめの資格は、今後大工として活躍していくうえで有利となる資格です。今後のキャリアアップを考慮したうえで、自身に必要な資格を取得してみてください。
以下の記事では頑張っている大工さんのさまざまな悩みについて解説しております。
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