職人さんの道具や技術へのこだわりをご紹介する『こだわり』。今回は小平市で塗装業を営む塗装職人、村山高広さんのインタビューです。
村山さんにはこちらの記事で道具へのこだわりについて語って頂きましたが、今回の取材では村山さんの仕事観や、業界に対する考え方について語って頂きました。
※写真撮影時の一部のみマスクを外して頂き、編集部スタッフはマスク着用の上で取材を実施しています。
【プロフィール】
村山 高広(むらやま たかひろ)
1982年生まれ。19歳で塗装業の世界に入り、24歳で独立。こだわりの道具と技術でお客様に真摯に向き合い続ける。
HP:https://murayama-paint.com/
Instagram:https://www.instagram.com/murayama_paint/
目次
祖父の代から大工の家系。自身も大工を志すはずが、選んだのは塗装業
「おじいちゃんの時代から大工をやっていて、自分も自然と大工を目指すようになりました」
村山さんは懐かしそうに語ります。
「中学を卒業して、建築の工業高校に進学しました。でも建築の学校って設計とか製図を勉強する世界で、現場でものづくりする世界とはちょっと違ってたんですね。それで高校を辞めて、10代後半はバイトしながら遊び歩いてました。それで18歳か19歳くらいになった頃、皆が進学したり就職したりしていく姿を見て、自分もしっかりしないとと思い、父の会社で働かせてくれと頼みました」
しかしお父様はそれをよしとせず、「お前はうちで働くと甘えてしまう。まずは外で修行してこい。初めからうちじゃだめだ」と、別の会社で働くことを勧めました。
「求人情報誌で仕事を探したんですが、大工の仕事がなくて、たまたま募集していたのが塗装屋と水道屋でした。給与はどちらも同じくらいでしたが、塗装屋はボーナスが出ると書いてあったので塗装屋を選びました。それがきっかけで20年以上塗装屋をやっています。これには父も『お前は大工になりたいんじゃなかったのか?』と驚いていました。ちなみにボーナスはもらえなかったんですけどね(笑)」
成り行きで始めた塗装業、それでも夢中に
「最初は大工を募集してなかったから塗装業を選びましたが、やっていく中で塗装の仕事が面白くなってきました。昨日より今日、今日より明日と、できなかった事ができるようになったり、綺麗に仕上げができるようになったり早く塗れるようになったりしていく中で、この仕事にどんどんのめりこんでいきました」
塗装用語でハケやバケツ、ローラーなどの道具を”おもちゃ”と指しますが、村山さんにとっての塗装業も同様、遊び心をもって楽しめる仕事です。
「やっぱりものづくりは楽しいですね。それでいて、自分がこだわりもってやった仕事をお客さんに見てもらって、ありがとうって言ってもらってお金をもらえる。最高だと思います」
入った会社で経験する、手抜き仕事と業界の課題
「最初入った会社は手抜き工事をする会社で、そこでの経験が反面教師になりました。例えば家一軒の塗装を4日で仕上げたりしていましたが、普通はそんな事できません。水洗いをする時でも、本当はこけを落としたり汚れを落とす事が必要になりますが、洗浄機で水をかけるだけなので、やってる事は雨で濡らしているのと大差ありません。それでも仕上がった時だけは綺麗に見えてしまう為、こういった手抜き仕事が横行してしまいます」
村山さんは他にも、ずさんな仕事の例について指摘します。
「下塗りの時、入れ墨といって上の塗料が乾きにくい場所が出てきます。本来は入れ墨が乾かないと次の工程にいけないのですが、そこに時間をかけないため、敢えてそこだけ塗らないというやり方をしていました」
独立して初めて、今までのやり方がおかしかったと気付く
「その会社で5年働いてから独立して、一人親方として色んな会社に助っ人として現場に入りましたが、そこで周りの職人さんに『なんてやり方してるんだ』と指摘されて、初めて自分がやってたやり方がおかしいと知りました。」
村山さんは、そこで悔しい思いをしながら正しいやり方を学んでいくと同時に、ある事に気付きました。
「色んな現場を経験していく中で、入る現場によって、正しいと言われるやり方も違っている事に気付きました。でも、これって本来はおかしい事で、塗装で言うなら塗料メーカーが推奨しているやり方があるはずなのに、施工会社によって違っているんです。その製品を作ったメーカーが打ち出しているやり方が正解なはずなのに、メーカーが推奨するやり方で仕事を進めないのはなぜかと考えるようになりました」
この頃から、村山さんは業界に対して疑問を感じながら、それぞれの現場で学ぶべき点を絞って技術を習得していきました。
塗装業界全体の課題
「私に限らず、職人を長くやっていれば仕事に対するプライドは自ずと出てきます。ですが、塗装に関しては仕上がりは綺麗に見えてしまう為、手抜きをして安く仕事を請けても仕事は完結できてしまいます。そういったところからお客さんの想定する価格が下がってしまい、同様に手抜きをして安く仕上げないと成り立たないようになってしまっています」
例えば塗料メーカーは製品の設計単価(メーカーの推奨する㎡ 単価)を提示していますが、現場の職人さんが受け取る金額はその4分の1ほどになってしまいます。
「過去には職人は仕事を安く請ける事が正しいといった風潮もあり、そういった事が積み重なって今の状況になっています。業界にいる者として恥ずかしい話ですので、こういった状況を変えたいと思っています」
監視役としての元請
「仕事を知らない監督が、仕事を取る為に嘘をついたり、自分が分からない事を現場に確認せずお客さんと話をつけたりしているケースが見られます。現場から見たら無理のある工事でも、お客様との間に話がついてるからやってくれと言われたり、お客様のためじゃなく、会社の上司の為の仕事をするようなスタンスでやって仕事をしている事も多く、現場の職人としてはお客様を裏切ってるような気持ちになってしまいます」
村山さんは、元請のあるべき姿についてこう語ります。
「私も元請さんとの付き合いは今もありますし、元請の存在が悪いとは思っていません。一緒にお客様の為になるものを作り上げるという目的で、職人とは違う視点で施工を見てくれるという面は良い面でもあると思いますし、監督する役割があるのは良い事だと思います。現場監督や元請がお客様に誠実で、ただ言われた事を横に流すのではなく、現場をチェックする役割として機能しているかが大事だと思います。
質の高い仕事を提供する為にできること
価格競争に陥らないようにするには、価格に頼らず顧客を獲得する必要があります。村山さんは自社のHPを作ったり、SNSを開設するなど、様々な方法を模索しています。こういった工夫について、村山さんはこう語ります。
「新しいことをやったりする上でのヒントは職人以外のコミュニティで得る事が多いです。例えば青年会議所という、40歳以下の経済人が集まってる団体があります。そこにはいろんな職種の方がいて、それぞれ違った目線や考え方を持っているので、そこで得た知見を元にアイディアを膨らませています」
同じ業界の中にいると考え方が固まってしまう。それを避ける為、村山さんはあえて違う業種の人たちとの交流を持つようにしています。
「他には商工会などもありますし、地元の付き合いもあります。職人の世界では8時〜17時で仕事は終わりという意識が強いですが、17時以降も自分の成長や、何かしらプラスになるような事に目を向けるようになればもっとよくなるんじゃないかと思います。とにかくまずやってみる事ですね。それで命をとられる事もないですし」
地域に根ざした会社として、業界を良くしていく
今後の目標について、村山さんはこう答えます
「規模を大きくしていくというより、地域に根ざした会社にしていきたいと思います。小平には塗装会社が多くありますので、その中で候補の一つにあがるようにしていきたいです。また、価格競争で手抜きの仕事をしている職人で、本人がそこから抜け出したいと思っている人たちに向けて、こうしていったら変わりますよという見本を示していきたいと思います。」
(文/赤木 勇太)
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