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建設業の未来をつくる、外国人材との向き合い方

人手不足が深刻化する建設業において、外国人材との共生は、もはや避けて通れないテーマになっている。

一方で、現場では今なお「どう受け入れるのが正解なのか分からない」「制度は分かっても、実際のマネジメントが難しい」といった声が絶えない。

今回話を聞いたのは、株式会社CiRCUS代表取締役のヨッシー親方。関東を中心に、ダクトや配管の断熱・保温工事を手がける経営者だ。建設系YouTuberとしても知られ、独自のキャリア制度や副業推奨など、従来の建設業の常識にとらわれない組織づくりを実践してきた。

株式会社CiRCUS代表取締役 ヨッシー親方

断熱・保温工事業を営むかたわら、建設業の新しい働き方や組織づくりを発信している

そんなヨッシー親方が外国人材の受け入れに踏み出した背景には、「監理団体に関わっているのに、自分は何も知らないままでいいのか」という問題意識があった。

そして実際に受け入れを始めた今、見えてきたのは、制度論よりも先に、受け入れる側の姿勢こそが問われるという現実だった。


目次
  1. 監理団体がきっかけで受け入れを決意
  2. 面接はオンラインでは足りない。だからこそ現地へ
  3. 最大の壁は“暗黙の了解”
  4. 現場での受け入れ体制
  5. “安く使える”という発想では、長続きしない
  6. “社員として迎える”と、現場の空気は変わる
  7. 外国人材が、既存社員を変えることもある
  8. 生活支援は“過保護”ではなく、立ち上がりを支える投資
  9. これからの建設業経営者に必要なのは、“姿勢の更新”

監理団体がきっかけで受け入れを決意

ヨッシー親方は、かがやき協同組合という監理団体の理事を務めている。

監理団体とは、技能実習制度において、受け入れ企業への監査や実習生の支援などを担う組織だ。実習生と受け入れ企業の間に立ち、制度が適切に運用されるよう管理する役割を持つ。
きっかけは、同業の仲間から声をかけられたことだった。もともと親しい間柄でもあり、二つ返事で引き受けたという。

当初は、実務に深く関わるつもりはなかった。届くのはカリキュラムに関するメール程度。だがその立場にいるうちに、ある違和感が生まれる。

「監理団体の理事をやっているのに、自分が受け入れの実態を知らないままなのは良くないのではないか。自分の会社で受け入れていないのに、何を語っても説得力がない」

この感覚が、実際の受け入れへと踏み出す原点になった。


面接はオンラインでは足りない。だからこそ現地へ

2024年春、ヨッシー親方はインドネシアへ渡った。
目的は、送り出し機関(日本語学校)の視察、そして候補者との面接だ。

いまはオンライン面接が一般的だが、ヨッシー親方は「数年間一緒に働く相手だからこそ、実際に会ってみたい」と考えた。面接の場だけでなく、授業中の様子や休み時間の雰囲気まで見たかったという。

通常は2人ずつ3回に分けて、最大6人まで面接できる形式だったが、ヨッシー親方は校長に頼み、一人ひとりとの個別面談に変更してもらった。
日本語学校とはいえ、来日前の段階で高い日本語力を期待しすぎるのは現実的ではない。だからこそ、インドネシア語でも構わないという前提で、「何が好きか」「なぜ日本に行きたいのか」といった人柄を見る面談を重視した。

さらに、面談以外の時間の様子も現地スタッフに撮影してもらった。“面接の受け答え”ではなく、“普段の姿”を見ようとしたのである。

面接を終えた時点で、2名の採用を決めていた。だが、面接を終えてホテルに戻ったあと、別の候補者からSNSのDMが届く。
そのメッセージを見て、「この子は日本人的な気配りができる」と感じ、結局3人を採用することにした。

国をまたいだ受け入れである。かかるコストを考えると、決して軽い投資ではない。
それでもヨッシー親方は、「なら3人分、稼げばいい」と腹を決めた。

この決断には、外国人材を“コスト”ではなく、“育てる対象”として見ている姿勢がよく表れている。


最大の壁は“暗黙の了解”

実際に実習生を受け入れてみて、ヨッシー親方が最も強く感じたのは、日本の現場にある“暗黙の了解”の多さだったという。

たとえば、「10分前集合」は日本人にとっては当たり前でも、説明しなければ伝わらない。

「いい感じにやっておいて」といった曖昧な指示も通じない。いや、正確に言えば、日本人相手でも本来は通じていないのかもしれない。ただ日本人同士だと、なんとなく察して成立していた部分が、外国人相手だと露わになる。

ヨッシー親方はこう語る。

「外国人を指導できない人は、結局、日本人の新人もきちんと指導できていない。重要なのは、いかに指示を言語化するかだ。」

「これはいい」「これはダメ」を事例で見せる。
「違う」だけで終わらせず、「何が」「なぜ」違うのかまで伝える。
そのラリーを何度も繰り返す。

見て覚えろ、は日本人以上に通じない。
だが逆に言えば、外国人材の受け入れは、現場の教育力そのものを鍛え直す機会にもなる。


現場での受け入れ体制

外国人材の受け入れで、社長自身の覚悟と同じくらい重要なのが、現場社員の受け止め方だ。
ヨッシー親方が社内に最初に伝えたのは、とてもシンプルだった。

「とにかく、日本語が通じないからといってイライラしないでほしい。」

現場での会話は、基本的には日本語で伝える。身振り手振りも使う。どうしても難しい時だけ翻訳アプリを使う。

大事なのは、最初から“通じない前提”で構えることだ。

さらに、誰に指導を任せるかも慎重に考えた。
性格に合いそうなリーダーを配置し、事前に「こういう子です」「こういうところが得意です」「ここは少し苦手です」と共有する。好きなアニメや趣味まで伝えるという。そんな小さな情報でも、受け入れる側の心構えは大きく変わるからだ。

ネガティブな情報も、あえて先に伝える。期待値のズレによるストレスを減らすためだ。

ここで一貫しているのは、「外国人だから特別」ではなく、「人として理解しようとする」姿勢である。
ヨッシー親方は、外国人だろうと日本人だろうと、人と人の関係であることは変わらないと言う。


“安く使える”という発想では、長続きしない

外国人材の受け入れについて話すと、「やっぱり儲かるのか」と聞かれることがあるという。
しかしヨッシー親方は、この発想に強い違和感を持っている。

技能実習生の給与は地域の最低賃金水準から始まるケースもある。だが、組合に支払う監理費などもあり、単純に“安い労働力”とは言い切れない。むしろ、金銭面だけを見れば、日本人の若手を雇った方が安いこともある。

何より問題なのは、受け入れの起点が「安く使えるから」になってしまうことだ。
その感覚のままでは、期待通りに動かなかった時に、管理者の不満やヘイトが本人たちに向けられやすい。

ヨッシー親方は、「外国人材を“コマ”として扱えば、相手もまた会社を“稼ぐためだけの場”として割り切る」と見る。

逆に、きちんと向き合えば、向こうも向き合ってくれる。

実際、受け入れた実習生からは、「自分が休むと社長が困るから現場に出ます」といった言葉も出てきたという。
そこにあるのは、国籍の違いではなく、信頼関係の有無だ。


“社員として迎える”と、現場の空気は変わる

ヨッシー親方の会社では、外国人材を「技能実習生だから別枠」とは見ていない。
あくまでCiRCUSの社員として接している。

その違いは、日常の空気に表れる。

たとえばさまざまな受け入れ先会社が集まって食事をする際、多くの会社で日本人の輪と外国人の輪が自然に分かれるという。だがCiRCUSでは、日本人の輪の中に外国人材が入って一緒に食事をしている。現場の詰め所でも、元請けから「CiRCUSの外国人は他と違う」と言われることがあるそうだ。

理由は特別な施策ではない。分からないことを「分からない」と言っていい空気を、日頃からつくっているからだ。

「何回聞いてもいい。分かるまでやろう。そのために上がいる。君たちが仕事ができない原因は、上にある」

この考え方は、外国人材向けというより、本来は組織全体に必要なマネジメントである。


外国人材が、既存社員を変えることもある

受け入れの効果は、外国人材の成長だけではない。既存社員の側にも、化学変化が起きることがある。

ヨッシー親方の会社には、勤続10年の中堅社員がいる。もともとは一人で仕事を進めるのが好きで、不器用な人や仕事の遅い人にイライラしやすいタイプだったという。

その社員が、最も手先が不器用なインドネシア人実習生と、結果的に一番仲良くなった。

理由は、その実習生の前向きさにあった。

「難しい、でも諦めない、頑張る」

その姿勢が、周囲の空気を変えたのである。

笑顔が増え、現場に少し余白が生まれた。外国人材の受け入れは、単に人数を補う話ではない。組織文化をやわらかくし、チームの関係性を再構築する契機にもなり得る。


生活支援は“過保護”ではなく、立ち上がりを支える投資

外国人との共生においては、生活面のフォローも欠かせない。
ヨッシー親方は、受け入れにあたって住居を会社で借り上げ、3人にそれぞれの個室を用意した。実際には仲が良く、同じ部屋で寝ていることもあるというが、プライバシーに配慮した環境は整えている。

また、来日直後は手元資金が潤沢ではない。初任給が出るまで、少ない持参金でやりくりしなければならず、食費にも苦労しやすい。

そこで、会社側が米を渡したり、事務所で焼き肉をしたりと、食の面でも自然に支えている。

彼らの多くは、家族の期待を背負って来日している。
なかには、毎月5万円ほどを母国へ仕送りする実習生もいる。そう考えると、食費は現地の感覚では決して小さくない金額だ。

こうした背景を知るだけでも、受け入れる側の見え方は変わる。
サポートとは甘やかしではなく、戦力化までの立ち上がりを支えるための投資なのである。


これからの建設業経営者に必要なのは、“姿勢の更新”

今後、ヨッシー親方は外国人材の受け入れを継続していく考えだ。
現在の技能実習生が特定技能へ移行し、その分の枠で新たな人材を迎える構想もある。

ただ、この話の本質は制度の運用テクニックだけではない。
むしろ問われているのは、受け入れる企業側の意識のあり方だろう。

外国人材を、足りない人数を埋めるための安価な手段として見るのか。
それとも、言葉も文化も違う相手と向き合うことで、自社の教育力や組織力そのものを鍛え直す機会と見るのか。

ヨッシー親方の実践が示しているのは、後者である。

外国人との共生に、まだ業界共通のベストプラクティスはない。
しかし、少なくとも確かなヒントはある。

ヒントは、次の3つにある。

  • 曖昧に教えないこと。
  • 人として理解しようとすること。
  • 社内の受け入れ態勢を整えること。

そして、搾取ではなく、共に成長するという前提に立つことだ。

建設業がこれからも持続していくために必要なのは、外国人材を受け入れることそのものではない。
外国人材と一緒に働ける会社へと、自分たちが変わっていくことなのかもしれない。

株式会社助太刀マーケティングチーム

助太刀社員 転職サポート編集部

助太刀社員 転職サポート編集部です。転職にまつわるお悩みや疑問にお答えし、より良いキャリアを作っていけるようにお手伝いさせて頂きます。

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