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2023.4.13

インボイス制度とは|小規模建設業者への影響・必要な準備などを弁護士が解説

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2023年10月1日から、消費税(地方消費税を含む、以下同じ)の経理に関して「インボイス制度」が新たに施行される予定です。小規模な建設業者・一人親方は大きな影響を受ける可能性があるので、今のうちに必要な準備などを確認しておきましょう。

今回はインボイス制度について、概要・小規模建設業者への影響・必要な準備などをまとめました。

※本記事は2023年3月5日現在の情報を基に作成しています。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるに当たり、原則として適格請求書等の保存を要件とする新制度です。
特に、年間売上1000万円以下の小規模事業者(消費税の免税事業者)への大きな影響が予想されています。

消費税の仕入税額控除には、原則として「適格請求書等」が必要になる

消費税の「仕入税額控除」とは、消費税の納税額を計算する際、受け取った消費税額から支払った消費税額を控除することをいいます。

たとえば、建設業者が1100万円(うち消費税100万円)の工事を受注し、その工事のために550万円(うち消費税50万円)で資材の調達等を行ったとします。

この場合、建設業者が納めるべき消費税額は、100万円から50万円を仕入税額控除した50万円です。

2023年10月1日にインボイス制度が施行されると、仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書等の保存が義務付けられます*1*2。

<適格請求書等に当たるもの>
・適格請求書(原則)
・適格簡易請求書(小売業・飲食店業・タクシー業等に限る)
・仕入明細書等(発注者側が作成し、受注者側の確認を受けたもの)
・電子インボイス(適格請求書または適格簡易請求書の電子データ)

適格請求書等を発行できるのは、税務署の登録を受けた課税事業者のみ

適格請求書等を発行できるのは、税務署の登録(インボイス登録)を受けた事業者のみです。インボイス登録を受けるには、消費税の「課税事業者」であることが要件とされています。

「課税事業者」とは、消費税の納税義務を負う事業者です。以下のいずれかに該当する事業者は、自動的に課税事業者となります。
(1)前々年(法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が1000万円を超える事業者
(2)前年1月1日から6月30日まで(法人の場合は前事業年度開始後6か月間)の課税売上高および給与等支払額の合計額が、いずれも1000万円を超える事業者

これに対して、上記(1)(2)のいずれにも該当しない事業者は、原則として消費税の納税義務を負いません。このような事業者を「免税事業者」といいます。

免税事業者は、税務署に対して届出*3を行うことにより、課税事業者へ移行できます。

インボイス制度によって小規模建設業者・一人親方が受ける影響

年間売上が1000万円以下の小規模建設業者・一人親方は、インボイス制度の施行によって以下の影響を受ける可能性があります。
(1)適格請求書を発行できない場合、発注元から敬遠されるおそれがある
(2)課税事業者への転換を選択すると、消費税の納税義務が発生する

適格請求書等を発行できない場合、発注元から敬遠されるおそれがある

前述のとおり、インボイス制度に基づく適格請求書等を発行できるのは、税務署の登録を受けた消費税の課税事業者のみです。したがって、年間課税売上高1000万円以下の免税事業者は、適格請求書等を発行できません。

適格請求書等を発行できない場合、発注元は原則として、発注額に応じた消費税額を仕入税額控除に算入できません。
つまり発注金額が同じであっても、発注元にとって、免税事業者への発注は課税事業者への発注よりも不利になります。

その結果、発注元が免税事業者への発注を敬遠し、課税事業者である同業他社へ流れてしまうおそれがあります。

課税事業者への転換を選択すると、消費税の納税義務が発生する

年間課税売上高1000万円以下の事業者でも、税務署に対して届出*3を行えば、免税事業者から課税事業者への移行が可能です。課税事業者に移行すれば、インボイス登録をして適格請求書等を発行することができます。

しかし、免税事業者から課税事業者へ移行すると、毎年消費税の納税義務が発生します。

これまで免税されていた消費税が課税されるため、事業の収益や資金繰りへの影響は避けられません。特に小規模事業者の場合、元の利益そのものが少ないケースが多く、消費税分の利益減少が大きな痛手となる可能性があります。

インボイス制度の施行に向けた小規模建設業者・一人親方の対策

2023年10月1日のインボイス制度施行に向けて、小規模な建設業者や一人親方がとるべき対応は、年間の課税売上高が1000万円超か否かに応じて異なります。

年間売上1000万円超の場合|インボイス登録を申請する

年間課税売上高1000万円超の建設業者・一人親方は、発注元から取引を敬遠されることを防ぐため、インボイス登録を申請するのがよいでしょう。

インボイス登録の期限は原則として2023年3月31日ですが、未申請の事業者が多い状況を踏まえて、2023年9月30日までにインボイス登録を申請すれば、制度開始初日から登録がなされることになりました*4。

ただし登録申請書を提出してから、登録番号が記載された登録通知が届くまでには一定の期間*5を要するため、余裕をもって登録申請を行うことをお勧めいたします。

なお、適格請求書(または電子インボイス)には、以下の事項を記載する必要があります。制度開始に備えて、適格請求書のフォーマットを準備しておきましょう。

(1)適格請求書発行事業者の氏名(名称)、登録番号
(2)取引年月日
(3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
(4)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)、軽減税率
(5)税率ごとに区分した消費税額等
(6)書類の交付を受ける事業者の氏名(名称)

年間売上1000万円以下の場合|取引先の属性・意向を踏まえて検討する

年間課税売上高1000万円以下の建設業者・一人親方は、免税事業者にとどまるか、または課税事業者に移行してインボイス登録をするかの選択を迫られます。

課税事業者に移行してインボイス登録すべきか否かは、取引先(顧客)の属性や意向を踏まえて決めるのがよいでしょう。

顧客が主に事業者ではない一般消費者の場合、インボイス登録は不要かもしれません。事業者でなければ消費税の仕入税額控除は問題にならず、インボイス登録をしていない免税事業者であっても敬遠されないと考えられるためです。

これに対して、取引先(顧客)が主に事業者の場合は、インボイス登録をすべきか否かはケースバイケースの判断となります。

取引先の事業者が分散している場合や、主要取引先が免税事業者との取引を敬遠する(または消費税分を請負代金から減額する)意向を示している場合は、インボイス登録をした方が賢明でしょう。

一方、主要取引先からの信頼が厚く、インボイス登録をしなくても取引が維持できることが確実な場合には、インボイス登録をしない判断もあり得るかもしれません。

いずれにしても、年間課税売上高1000万円以下の建設業者・一人親方にとって、インボイス制度への対応には難しい判断を迫られます。

実際にどのような形で制度が施行されるかも不透明な部分がある中で、ご自身や取引先(顧客)の状況を踏まえた上で、最善の選択を見極めなければなりません。

*1 簡易課税制度の適用を受けている場合には、仕入税額控除を受けるに当たって適格請求書等の保存は不要です。
国税庁「No.6505 簡易課税制度」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
*2 2023年10月1日から2029年9月30日までは、一定の事項を記載した請求書等と帳簿の保存を条件に、80%または50%の仕入税額控除を受けられる経過措置が設けられています。
国税庁「お問合せの多いご質問 問1」p2
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf
*3出所)国税庁「消費税課税事業者選択届出手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_01.htm
*4出所)国税庁「申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm
*5 e-Tax提出の場合は約3週間、書面提出の場合は約2か月。
出所)国税庁「適格請求書発行事業者の登録件数及び登録申請書の処理期間について」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/kensu_kikan.pdf

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

https://abeyura.com/
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