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一人親方が法人成りする際の手続き|費用や注意点・メリットなどを弁護士が解説

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一人親方としての活動がある程度軌道に乗ると、事業規模を拡大するため、あるいは税金負担などを考慮し、法人成りを検討する方が多くいらっしゃいます。

今回は、一人親方が会社を設立して法人成りする際の手続きや、必要な費用・注意点などをまとめました。

一人親方の法人成りに必要な手続き

一人親方が会社を設立して法人成りする場合、必要な手続きは大まかに以下のとおりです。
(1)会社を設立する
(2)税務関係の各種届出を行う
(3)健康保険・厚生年金保険に関する手続きを行う
(4)労働保険に関する手続きを行う

会社を設立する

まずは会社を設立しましょう。一人親方が法人成りする場合、株式会社または合同会社のいずれかを選択するのが一般的です。

(1)株式会社
会社の所有者(=株主)と経営を行う者(=取締役)が分離した会社形態です。設立費用は合同会社よりも高額ですが、高い信用力が認められる傾向にあります。

(2)合同会社
会社の所有者(=社員)が自ら経営を行う会社形態です。設立費用は株式会社よりも安い反面、信用力では劣る傾向にあります。

会社の設立手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。

(a)印鑑を準備する
会社を設立する際には、会社の印鑑を届け出る必要がありますので、届出用の会社印鑑を準備しておきましょう。また、設立時取締役の印鑑証明書が必要になるので、事前に印鑑登録を済ませておきましょう。

(b)定款認証を受ける
株式会社の場合は、会社の定款を作成した上で、公証役場で認証を受けます。
合同会社の場合は、定款認証は不要です。

(c)登記申請を行う
法務局で会社の登記を申請します。必要書類は以下のとおりです。
・登記申請書
・登録免許税納付用台紙
・定款
・発起人の決定書
・設立時取締役の就任承諾書
・設立時代表取締役の就任承諾書
・設立時取締役の印鑑証明書
・資本金の払込みがあったことを証する書面
・印鑑届出書
・「登記すべき事項」を記載した書面(またはCD-R)

(d)登記完了
登記が完了したら、登記申請日に会社が設立されたことになります。

取引先との間で契約の承継(変更)を行う

一人親方として受注していた工事などを会社へ引き継ぐ場合には、取引先との合意に基づき、契約の承継(変更)を行う必要があります。

取引先が同意してくれれば問題ありませんが、案件の途中での契約変更には難色を示されることも多いでしょう。その場合には、受注済みの工事はそのまま一人親方として受注し、次の依頼から会社受注に切り替えてもらうなどの対応を検討しましょう。

税務関係の各種届出等を行う

新たに会社を設立した場合、税務署・都道府県税事務所・市町村に対して以下の届出を行う必要があります。

税務署

(1)法人設立届出書*1
会社設立日から2か月以内に提出します。

(2)法人税の青色申告承認申請書*2
法人税の青色申告を行う場合に、会社設立後3か月以内(それより早く第1期の事業年度が終了する場合には、第1期の事業年度終了日の前日まで)に提出します。

(3)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書*3
役員・従業員に対して給与を支払う場合に、給与の支払い開始から1か月以内に提出します。

(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書*4
給与などから徴収した源泉所得税は、原則として徴収日の翌月10日までに納付する必要があります。
しかし、源泉所得税の納期の特例の承認を受けていれば、1月から6月に徴収した分は7月10日まで、7月から12月に徴収した分は翌年1月20日までにまとめて納付できます。

(5)個人事業の開業・廃業等届出書*5
法人成りに伴い、一人親方としての個人事業を廃業する場合に、廃業日から1か月以内に提出します。

都道府県税事務所・市町村

(6)法人設立・設置届出書*6
会社設立日から15日以内に提出します。

(7)事業開始(廃止)等申告書*7
法人成りに伴い、一人親方としての個人事業を廃業する場合に、廃業日から10日以内に提出します。

健康保険・厚生年金保険に関する手続きを行う

常勤の役員または従業員がいる会社は、健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられていますので、以下の手続きを行う必要があります。

(1)新規適用届*8の提出
会社の登記簿謄本を取得できるようになってから提出します。

(2)被保険者資格取得届の提出*9
被保険者となる個々の役員・従業員ごとに提出します。

なお、健康保険・厚生年金保険への加入に伴い、一人親方が従前加入していた国民健康保険・国民年金については、資格喪失・脱退の手続きが必要です。

労働保険に関する手続きを行う

会社が従業員を雇用する場合は、以下の書類を労働基準監督署およびハローワークに提出して、労働保険・雇用保険の加入手続きを行いましょう*10。

(1)労働基準監督署に提出する書類
・保険関係成立届
・概算保険料申告書

(2)ハローワークに提出する書類
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届

一人親方の法人成りに必要な費用

一人親方が会社を設立した法人成りする際にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。

株式会社 合同会社
定款に貼付する収入印紙 4万円

※電子定款であれば不要

4万円

※電子定款であれば不要

定款の謄本手数料 1ページ当たり250円 不要
定款の認証手数料 資本金額に応じて以下の金額

100万円未満:3万円

100万円以上300万円未満:4万円

300万円以上:5万円

不要
登録免許税 15万円または資本金額×0.7%(いずれか高い方) 6万円または資本金額×0.7%(いずれか高い方)
その他 公的書類の取得費用など(数千円程度) 公的書類の取得費用など(数千円程度)

株式会社であれば18万円から25万円程度、合同会社であれば6万円から10万円程度が必要になります。

上記のほか、会社設立時に払い込む資本金を準備しなければなりません。資本金額は1円以上であればいくらでも構いませんが、ある程度高めに設定した方が信用力の面で有利です。

一人親方が法人成りを検討する際の注意点

一人親方が法人成りを検討する際には、法人成りのメリット・デメリットを慎重に比較することが大切です。

法人成りのメリット

・個人事業よりも信用力の面で有利
・事業主の責任が限定される(有限責任)
・家族を役員として給与を支払うことで所得を分散できる
・所得が多い場合は、個人事業よりも税率が低くなる
・その他、経費として認められる費用の幅が広い
など

法人成りのデメリット

・税務申告が大変
・社会保険への加入義務が生じる(保険料が高くなることが多い)
・赤字でも法人住民税の均等割負担が発生する
・所得が少ない場合は、個人事業よりも税率が高くなる

一人親方として個人事業を続けるべきなのか、それとも法人成りした方がよいのか、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の状況に応じて適切にご判断ください。

*1参考)国税庁「内国普通法人等の設立の届出」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_2.htm
*2参考)国税庁「青色申告書の承認の申請」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_14.htm
*3参考)国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm
*4参考)国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
*5参考)国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
*6参考)東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき 法人事業税に関する手続 法人を設立した場合・都内に初めて支店等を設置した場合」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/index05.html#L3
*7参考)東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき 個人事業税に関する手続 事業を開始した場合」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/index05.html#L1
*8参考)日本年金機構「新規適用の手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150311.html
*9参考)厚生労働省「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150422.html
*10参考)厚生労働省「労働保険の成立手続」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/daijin/hoken/980916_2.htm

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

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