「ご当地アイドル」があるように、実は建設業に関するアイドルユニットもいます。
塗料屋@サンライズは、「ペイントアイドル」というジャンルで活躍するアイドルユニットで、建築用の塗料やサブカル塗料など、日本の塗装を盛り上げるためのアイドルユニットです。Twitter上のフォロワー数は2万人を超え、大手家電量販店やエナジードリンクメーカーとコラボする事も。
今回は、塗料屋サンライズのプロデューサーである小木曽 貞幸さんに、アイドルユニット誕生の背景や塗装業の課題についてお話を伺いました。
▼小木曽 貞幸さん
塗料屋サンライズ プロデューサー・株式会社塗料屋サンライズ代表取締役。教員から塗装業という異色の経歴を経て、アイドルユニットである塗料屋@サンライズを立ち上げる
Twitter:https://twitter.com/sunrisetoryou
Instagram:https://www.instagram.com/toryouya_sunrise/
HP:https://www.toryouyasunrise.com/
目次
子供好きから教職に
赤木:小木曽さんはもともと塗装業の仕事をなさってたんですか?
小木曽:いえ、もともとは教員をやっていました。会社勤めが苦手で、子供が好きだったこともあり教員の免許を取得し、そこから幼稚園教諭を1年と、小学校で講師を3年やっていましたが、時世的に目指していたような仕事が出来ず、教職の道を諦めることにしました。
赤木:子どもとのコミュニケーションより親御さんとのコミュニケーションの方が難しいって話は聞きますね。
小木曽:それでハローワークで家の近所で出来る仕事を探していたら、たまたま塗料販売店があって、そこに就職したのが塗料業界での仕事の始まりです。
赤木:たまたまだったんですね!
小木曽:とにかく通勤が嫌だったんで。通勤時間で往復2時間かかると、平日5日間通勤するとで10時間になるじゃないですか。その時間がもったいなくて近所の塗料販売店に就職しました。
赤木:それでも教員から塗料販売店は珍しいですね。
小木曽:相手が大人でも子供でも人と話すことは好きだったので、とりあえず営業でもなんでもやってみようかと。そこに10年以上勤めたあと、今の会社「塗料屋サンライズ」を立ち上げました。
価格競争から脱する為、アイドルユニットをプロデュース
赤木:そこからどういう経緯でアイドルユニットをプロデュースし始めたんですか?
小木曽:塗料販売店は卸売業になりますが、卸売業は商品そのもので差別化することはとてもむずかしいです。
赤木:仕入れ元のメーカーは一緒ですからね。
小木曽:これだけ物価が上昇している今、最終的には価格競争に終わってしまうので、どうやって差別化しようと考えた時に、塗料の世界ってタレントとかイメージキャラクターを立てて精力的にPRしている会社がないことに気付きました。
赤木:確かに、あまり聞かないですね。
小木曽:それで、色んなキャラクターやアイドルのビジネスモデルを研究して、塗料の世界でもキャラクターを立ててPRすることで、まず会社のファンになってもらおうと考えました。
赤木:そこでアイドルにたどり着くんですね 笑
小木曽:色んなアイドルユニットを研究したんですが、消費が冷え込んでいる時代であっても、趣味ごとであればお金を使ってくれるはず。特に日本ではアニメやアイドルといったコンテンツに人気が集まるため、そういったサブカル領域と絡めた「付加価値」を付けることで独自性を出したいと考えました。
3人のアイドル、残る1人は空席
小木曽:赤木さんは塗装ってやったことありますか?
赤木:僕はないですね。
小木曽:そうですよね。コロナ巣ごもりDIY特需やDIY女子なんて言葉が聞こえてきますが一般の方が塗料に触る機会は、日常生活の中にあまりないのが現状で。
一方で、塗装職人に対して『ペンキ屋は馬鹿がなる仕事』とか、子ども連れの親に「勉強しないとああなるわよ」とか言われたり、塗装職人に対する偏見は未だに根強く感じます。
赤木:そもそも塗装業との接点がほとんどないですからね
小木曽:自分たちが住んでる家も塗装屋さんがいるから綺麗な家に住んでいられるのに、その辺がなかなか理解されていない部分もありますよね。だからこそ、塗装をもっと身近に感じてもらえるように、塗装と言われてすぐ連想される象徴的な存在が必要なんです。ゆるキャラといって思いつくものってなんですか?
赤木:ふなっしーとかですかね
小木曽:そう。そういう、「〇〇といったら△△」とすぐに連想できるものが塗料、塗装の世界にあって、それがポジティブなイメージに繋げたくて、塗料屋@サンライズというアイドルユニットを作りました。
赤木:今は3人なんですよね。
小木曽:はい。予め描いていたキャラクターは4人いますが、それぞれの名を冠したメンバーは3人です。以前、4人目のオーディションを開催した際は100名近い応募を頂きましたが、採用には至りませんでした。
赤木:100人!
小木曽:今いる3人とのチームワークだったり、塗装現場や展示会といった様々な仕事をこなしていただくことを考慮した結果、最終選考まで残った数人とは現メンバーと面接までしましたが、今回は該当者無しということで見送らせて頂くことにしました。
建設現場で塗装をするアイドル
赤木:現場に出るとおっしゃいましたが、彼女たちは実際に現場で塗装をすることがあるんですか?
小木曽:はい。頻度も高いですし、彼女たちも塗料や刷毛についてきちんと語れるくらいに知識や技術を身に着けています。
赤木:それはイベントで塗装をしたりするってことですか?
小木曽:いえ、実際の建設現場に出ます。塗料の販売をしていると、塗料を買に来たお客様から「誰か現場の応援に来れる人いない??」と頼まれることも多く、彼女達のスケジュール、都合があえば現場で仕事をしたりしています。
赤木:アイドルが実際に外壁塗装をやっているんですね。
小木曽:施工先の方には好評頂いており、お客様からお問い合わせ頂くこともあります。平日の戸建てなんかは家にいるのは女性だけだったりしますし、女性が塗っている方が安心できるという声もありますね。
フォロワー数は2万人を超える
赤木:活動をしていくなかで「これは上手くいった」っていうものはありますか?
小木曽:色々ありますが、やはりTwitterでの精力的な情報発信は上手くいきましたね。特にお金をかけたわけじゃないですが、それでもフォロワー数は2万人を超えています。
赤木:2万人は凄いですね!
小木曽:美味しい食べ物や便利な道具があっても、知ってもらわないと始まりません。業界でレアなポジションを獲得しても、知ってもらわないと始まりませんので。
フォロワー数が増えることでコラボの話を頂いたりできるようになりましたし、たくさんの人に見え貰えるTwitterでの情報発信効果は大きいです。
多彩なコラボを実施
赤木:他社とのコラボはどんな事例がありますか?
小木曽:例えば塗料メーカーの製品パッケージに塗料屋@サンライズのキャラクターが採用されているものがあったり、機械整備屋さんのイメージキャラクターになっていたり、塗料、建築業以外だと家電量販店のオノデンさんとのコラボだったり、湘南ゴールドエナジーというご当地エナジードリンクとのコラボなどもありますね。
その商品のイベント、展示会にキャラクターとして出演することもあります。
赤木:幅広くコラボされてるんですね。
小木曽:今はオリジナルの楽曲も出していますので、展示会やイベント会場で歌ったり踊ったりという活動も出来るようになり、さらにコラボの幅が広がりました。
例えて言うと塗料屋@サンライズというショッピングモールがあって、その中に様々な製品、電化製品も日用雑貨も、歌も音楽もあり、皆様の生活の中に自然と私達キャラクターが溶け込み、塗料や塗装に少しでも興味を持っていただけるようにしていきたいというのが活動の根底にあります。
赤木:ショッピングモールはわかりやすい。
小木曽:今年の8月にはJAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2022にて、塗料屋@サンライズがコラボした商品が経済産業省製造産業局長賞と一般人気投票部門 第一位をそれぞれ頂きました。
経済産業省製造産業局長賞
一般人気投票部門 第一位
で、W受賞✨✨✨
こんなに大きなステージに
私達が二度も登壇出来ること
本当に光栄です😌DIY、ホームセンター業界にも
ウレヒーロー旋風を
巻き起こしますよ🌪🌪🌪本当にありがとうございました😊 pic.twitter.com/IK8b9Iio0w
— 塗料屋@サンライズ®︎【公式】 (@sunrisetoryou) August 27, 2022
また、全国各地の中小企業・小規模事業者の後継者が新規事業アイデアを競うピッチイベント「アトツギ甲子園」で優秀賞を頂いたりと、塗料屋@サンライズがPRした製品が大きく評価頂いています。
【速報】
ウレヒーロー
最優秀賞は逃したものの100人を超えるアトツギの中
TOP2の優秀賞!!!本当におめでとう!!! pic.twitter.com/5N7nXGMexz
— 塗料屋@サンライズ®︎【公式】 (@sunrisetoryou) March 12, 2022
–審査員コメントより–
サブカルと塗料
異なるものを
組み合わせた事業を
創出されたことが
評価が高かった。イノベーションとは「新結合」
何かと何かを組み合わせた
新しいモノを作る。まさにイノベーターだと思います。
———-
Twitterから生まれた奇跡。
ありがとう。ウレヒーロー。 pic.twitter.com/cYupcAWV70— 塗料屋@サンライズ®︎【公式】 (@sunrisetoryou) March 12, 2022
子どもが塗装に興味を持てるように、絵本のクラウドファンディングに挑戦
赤木:最近、クラウドファンディングも始めたんですよね?
小木曽:はい。これは小さい子どもが塗装に興味を持てるようにと始めました。子どもって、本来何でも塗るのが好きじゃないですか?
赤木:お絵描きとか大好きですもんね。
小木曽:でも、大人の目や手が入ると部屋が汚れるからとか言われたり、自分が描きたいと思うものがかけなくなったりしちゃうんですよ。若者を建設業従事者として育てるというと、職業訓練とか大掛かりなものになりますが、そんな大それたことではなく、もっと小さい頃から絵具のような簡単な塗料にでも、たくさん触れてもらえたら「塗る事の楽しさ」を知り、塗装のイメージも良くなると思うんです。
業界の若者離れが進む中、遠い将来私達の絵本が何かの役に立てばいいなと。
赤木:なるほど、絵本を通じて塗装に興味を持ってもらうんですね。
塗装の世界でアイコン的な存在に
小木曽:とにかく様々なところに露出を増やして行って、塗料、塗装といったら塗料屋@サンライズと言われるようになりたいですね。塗装の世界って強面の男性というイメージが強いですが、そこにアニメキャラクターやアイドルがいるだけでも大きく業界のイメージが変わります。
赤木:確かに、今までの塗装業のイメージとはかなり違いますね。
小木曽:そういった形で塗料、塗装業界のアイコン的な存在になって、将来的には「塗料屋@サンライズのシンボルがついてる施工店は安心できる」みたいな制度も広めていきたいですね。
赤木:品質保証みたいなものですか?
小木曽:塗装の世界では品質の良し悪しが分かるのが5年後や10年になります。だから2回塗りと謳ってるのに1回しか塗っていなかったり、使い切った缶の写真だけ撮って施主に見せたりする業者も多くあります。
赤木:以前にも、塗装職人さんの取材で同様のお話をお聞きしました。
小木曽:そういった業者が相見積もりで案件を安く請ける事で、真面目に施工をしている会社が仕事を取れず、無理な価格競争に巻き込まれてしまいます。そういった不幸が起きないよう、塗料屋@サンライズのシンボルがついて施工店は安心できるという仕組みを作っていきたいと思っています。
そのために、これからも知名度を上げていき、業界のイメージアップに繋がるような前衛的活動を続けて行きたいと思います。
※コラボにご興味がある方のお問い合わせはこちら
[文:赤木 勇太]