TOP インタビュー 1億総クリエイター時代、建設業に求められる情報発信とは

1億総クリエイター時代、建設業に求められる情報発信とは

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ヨッシー親方は保温業の会社を経営しながら、登録者数1万人を超える建設系YouTuberです。
アニメーションを活用して、建設業の仕事内容をわかりやすく伝えたり、他の建設系YouTuberとコラボレーションして建設業の職人さんや経営者向けのコンテンツを発信しています。
そんなヨッシー親方ですが、実はご自身もベテランの職人であり、会社経営者でもあります。
ヨッシー親方はなぜYouTubeを始めたのか、建設業を魅力的にするための情報発信のあり方とは何かをお聞きしました。

▼鍔田 佳宏さん
建設系YouTuber「ヨッシー親方」として活動中。建設業の職種や仕事内容について、アニメーション動画を発信。自らは株式会社CiRCUS代表取締役を務め、人材育成やチームビルディングに尽力する。
Twitter:https://twitter.com/yosshi_oyakata
YouTube:https://www.youtube.com/@user-sd5lw9sf7u

たまたま始めた保温の仕事、親方と師匠の下で一人前に


赤木:よろしくお願いします。まず、いまのお仕事についてお伺いできますか

ヨッシー親方:いわゆる「保温屋」ですね。例えば商業ビルには、内部に冷暖房から空気を送る道があります。それらが適切な温度のまま、建物を利用する人たちのところに届くようにするのが保温屋の仕事です。

赤木:建設業のなかでも、保温屋さんの仕事を知る機会って限られるのかなと思いますが、仕事を初めたきっかけってなんだったんですか?

ヨッシー親方:私は大阪の出身なんですが、大学を出てから特に目的もなく東京に出てきて、たまたま見つけたのがいまの保温屋の仕事でした。会社には10年くらいいました。

赤木:10年は長いですね!

ヨッシー親方:最初の親方が良かったんだと思います。性格の抜けてるところも多いけど、それが逆に憎めない感じで、従業員や他の会社さんからも慕われてましたね。

赤木:その親方の下で仕事を学んでいたんですか?

ヨッシー親方:実際に仕事を教えてくれていた師匠は会社のナンバー2の方で、その人はコミュニケーションが取りにくい人でした。その人の下につくとみんなやめるっていうような人で、僕も「今日行ったら◯◯さん(師匠)に辞めるって言おう」って思いながら過ごしていました 笑

赤木:それでも続いてたんですね。

ヨッシー親方:2年くらいは師匠とマンツーマンだったんですが、1年経ったころ、他の同期と比べて自分だけスキルが上がっていることに気づきました。その頃、僕の給料が上がってたんですが、師匠が「お前、給料上がったか?上がってなかったら親方に言ってやろうと思ってたんだ。」って言ってくれて、厳しい人だけど、評価してくれてたんだって気付きました。

赤木:まさに職人の師匠弟子って感じですね。


ヨッシー親方:僕は師匠に一番怒られていましたが、他の人は怒られていませんでした。それも、師匠なりの可愛がりかただったんだと思います。

3年目で大きい現場の責任者で自分の下に師匠が入ることになって、そこの現場がうまくいって会社から表彰されました。その時もらった賞金をまわりの社員さんにも渡していたんですが、師匠はそれを受け取りませんでした。そこからは怒られなくなって、一人前として認めてもらったんだと実感しました。

赤木:達成感がありますね。

ヨッシー親方:この職場では職人として必要な技術を学ばせて頂きましたし、資格も一通り取ることができました。いまもこの会社とは交流があります。

赤木:円満な形で独立できたんですね。

ヨッシー親方:独立する時も、「色んな会社に営業していいし、仕事決まるまでいていいよ」と言われました。

子どもの頃からの夢を叶えるべく独立

赤木:独立したきっかけは何かありますか?

ヨッシー親方:もともと社長になりたいという夢がありました。中学では勉強してなかったんですが、高校で工業高校に入って、そこから指定校推薦で大学に入学しました。

赤木:学部はどこだったんですか?

ヨッシー親方:商学部です。他にもマーケティングや、心理学や倫理を学んだりしました。

赤木:独立してからは順調だったんですか?

ヨッシー親方:1年あれば元請けから高い評価を取れる自信はありました。ですが、社員を増やすとなった時に、自分の思うような育成ができず、色んな人が入っては辞めてを繰り返していました。

今も試行錯誤していますが、そのなかでも「キャリアデザイン」「チームビルディング」「リーダーシップ」が重要だと思っています。

コロナ禍をきっかけにYouTuberに

赤木:ヨッシー親方といえばYouTuberとして有名ですが、YouTuberになったきっかけはあったんですか?

ヨッシー親方:コロナ禍の時に、2週間ほど現場が止まって、なにもする事がありませんでした。そこで、もともと喋るのが好きだったこともあり、YouTubeを始めてみることにしました。

赤木:経験ゼロから動画制作は難しいと思うんですが。

ヨッシー親方:実は会社勤めの頃、副業で動画制作をしたこともあり、動画編集は一通りできたんです。

赤木:なるほど、それでYouTubeを始めたんですね。

ヨッシー親方:YouTubeを始めるにあたって、建設業をテーマにしようというのは決めていたんですが、既に建設系YouTuberは多くいました。そこで、女性や若い人向けにポップなアニメーションを作ってみました。


赤木:そうそう!アニメーションを使ってるのは斬新でしたね。

ヨッシー親方:でも最初は全然反響がなくって 笑 ところが、これを見た行政書士の方が会社に来て、こういう動画は行政書士にニーズがあると言われました。

赤木:行政書士の方にですか?

ヨッシー親方:行政書士の方は建設業許可を取ったりする仕事をしているんですが、その際に工事の内容が分からないと申請書類が書けなかったりします。そこで、行政書士の方むけに、建設業29業種の動画の解説動画を作ってTwitterで告知したところ、チャンネル登録者が50人くらい一気に増えました。

赤木:まさかそんなところにニーズがあったんですね。

ヨッシー親方:もともとYouTubeは明確な目的があったわけではなかったんですが、従業員に対してスキルアップや仕事での挑戦を促す上で、自分自身が挑戦している姿を見せたかったというのもあります。結果的に、動画を見てうちで働きたいと応募のDMが来たり、仕事の引き合いを頂いたりできるようになりました。

赤木:そういったところも社員さんに見せられたのも良かったですよね。

石男くんがきっかけで顔出し動画を公開


ヨッシー親方:noteにも書いたんですが、2022年1月に脳梗塞になってしまい、手術を受けました。その時、YouTuberの石男くんから連絡がきて、従業員や現場、入院費用のことなど色々と気にかけてもらって、「お金のことなら心配しなくていいよ」とまでいってくれました。

赤木:石男くんは以前にも取材させて頂きましたが、本当に損得なしで動いてくれるかたですよね。

ヨッシー親方:私も、一度YouTubeでコラボさせて頂いただけだったんでびっくりしました。実はその頃、YouTubeを止めようと思ってたんですが、石男くんに「むしろ顔出し動画を出そう!」って言われて、顔出し動画を始めました。


ヨッシー親方 初の顔出し動画

業界を良くするためにはSNSは必須

赤木:建設業を良くしたいというかたが多くいらっしゃいますが、業界をよくするために必要なことってなんだと思いますか?


ヨッシー親方:私が語るのもおこがましいですが、SNSはやった方がいいと思います。SNS上では、石男くんのように前向きに発信している人が既にいて、気持ちさえあればそういう人達を応援することもできます。

赤木:応援したら応えてくれたりもしますしね。

ヨッシー親方:1億SNS時代、総クリエーター時代とも言われますが、いま足りないのは発信者に対してリアクションをとるリアクターだと思います。まずは前向きな発信をしている人を応援することから始めてみるといいと思います。

赤木:始めから一人で発信をしようと思ったらハードルが高いですからね。

ヨッシー親方:一人で業界を変えるのは難しいですが、そういう活動をしている人を応援していると、同じように応援している人達とのつながりもできてきます。そうやって、仲間と一緒に業界を良くしていくのがいいですね。

後編に続く