しかし、「どんな足場があるの?」「枠組と単管の違いは?」「ビケ足場って何?」「次世代足場って新しいの?」など、疑問も多いかもしれません。
この記事では、各種足場のタイプに焦点を当て、それぞれの特性、長所・短所、主要部材、そして「違い」や「選び方」まで、初心者にも分かりやすく解説します。

目次
この記事を読んでわかること
・足場の基本的な役割と重要性
・主要な足場タイプ(くさび式/枠組/単管/吊り/移動式/次世代)の概要と特性
・各タイプのメリット・デメリットと適した工事シーン
・足場の主要パーツ名と機能
・【比較表】主要足場の違いと選択のポイント
・枠組足場のサイズ規格
・足場設置の基本的な流れと安全上の注意点

そもそも足場とは? なぜ工事に必要?
足場は、建設、解体、塗装、メンテナンスなどの作業時、作業員が安全かつ効率的に動けるよう一時的に設けられる仮設の作業床や通路です。主な目的は以下の通りです。
・高所作業床の確保: 安定した足元を提供。
・安全な移動経路: 昇降や水平移動を安全に。
・資材等の仮置き: 工具や材料を置くスペース。
・砂塵飛散や落下防止: 養生シート等の取り付け下地。これには、労働安全衛生法で定められた幅木、メッシュシート、防網等の設置も含まれます 。
・作業品質の向上: 安定した環境で丁寧な作業を可能に。
適切な足場の設置は法規でも定められており、特に高さ2メートル以上の箇所での作業では、原則として作業床の設置が義務付けられています。作業員の安全確保に不可欠です。

工事現場で主に使われる足場の種類とその特性
次に、現場でよく見かける代表的な足場のタイプを見ていきましょう。
1. くさび緊結式足場(別名:ビケ足場)
支柱の緊結部(コマ)に、手すりや布板、ブラケットなどの部材の「くさび」をハンマーで打ち込み固定するシステム足場です。「ビケ足場」とも呼ばれますが、これは株式会社ダイサンの登録商標が一般化したものです 。
・代表的な構成部材: 支柱、手すり、布板、ブラケット、ジャッキ付きベース金具、筋交、緊結用くさび など 。
・特性と主な用途: ハンマー1本で比較的スピーディに組立・解体が可能。強度が高く、主に中低層住宅やアパートの外壁工事で多用される。近年は中高層でも使用例が増えており、一般的には高さ31m未満が原則だが、「ビル工事用」として仮設工業会の認定を受けたシステムでは、補強等を施すことで45mまでの設置が認められる場合もある 。
・採用するメリット: 組立・解体が早く工期短縮に貢献。また、部材がコンパクトで輸送効率が良い。手すり先行工法に対応し安全性が高い 。ある程度の形状追従性あり。
・デメリット、運用上の注意点: ハンマー打撃音が大きいため騒音対策が必要。複雑な形状への対応力は枠組にやや劣る。壁つなぎの間隔は、労働安全衛生規則に基づき、単管足場に準じて垂直5m以下、水平5.5m以下とされる 。
・寸法規格について: スパンは1800mm(6尺)が一般的ですが、メーカーにより異なります。正確な寸法はメーカー仕様書で確認が必要。
2. 枠組足場
門型の「建枠」を基本に、ジャッキベース、筋交、鋼製布板(アンチ)などを組み上げていく、最もオーソドックスな足場です。部材はJIS A 8951 や仮設工業会の認定基準 に準拠していることが多いです。
・代表的な構成部材: 建枠、ジャッキベース、筋交、鋼製布板、連結ピン、アームロック、手すり柱、手すり、階段ユニット など 。
特性と主な用途: 高強度・高安全性で、中高層ビルやマンションの建設・改修工事で標準的に使われます。規格化された部材で安定性に優れます。原則として高さ45m以下で使用されます 。
採用するメリット: 頑丈で高層建築に対応可能。部材規格が統一され組立ミスが少ない 。打撃音が少なく比較的静か。広い作業スペースを確保しやすい。
デメリット・運用上の注意点: 部材が大きく重いため重機が必要な場合あり。部材種類が多く保管スペース要。曲線形状にはやや不向き。組立・解体に時間と労力がかかる。安衛則に基づき、高さ2m以上の作業床には手すり(高さ85cm以上)、中さん(高さ35cm~50cm)、幅木(高さ15cm以上)等の設置が必要です 。
3. 単管足場
直径48.6mmの「単管パイプ」(JIS G 3444 )と「クランプ」金具を組み合わせて構築するシンプルな足場です。
5. 移動式足場(ローリングタワー)
脚部にキャスターが付いており、組み立てたまま移動できる足場です。
・代表的な構成部材: キャスター、建枠、手すり、作業床、昇降用はしご/階段、ジャッキベース、筋交 など
・特性と主な用途: 同一フロア内で作業箇所が頻繁に変わる場合に効率的。天井配線、照明取付、空調工事、内装仕上げ、点検作業など、比較的小規模な高所作業に。
・採用するメリット: 組立・解体の手間が省け作業効率が良い。工期短縮・人件費削減に繋がる。比較的小回りが利く。
・デメリット、運用上の注意点: 移動床面は平坦であることが必須(転倒リスクのため)。高さは安定性計算(例:仮設工業会 H=7.7L-5)やメーカー仕様に従う必要がある 。移動時は必ず作業員が降り、ブレーキ確認が絶対条件。構造部分の高さが5m以上になる場合は「足場の組立て等作業主任者」の選任が必要 。高さ2m以上での作業には墜落制止用器具(安全帯)の使用が原則必要 。手すり(高さ90cm以上)、中桟、幅木(高さ10cm以上)の設置が求められる場合がある 。

6. 次世代足場
従来の足場の安全性・作業性・保管運搬効率などを向上させた新しい規格のシステム足場。多くはくさび緊結式をベースにしています。手すり先行工法が標準装備されていることが多く、組立・解体時の墜落リスクを低減します 。
・代表的な構成部材: 軽量化された支柱、手すり先行工法対応部材、ロック付き緊結部、幅広作業床などが特徴(メーカーにより異なる)。
・特性と主な用途: 安全性が飛躍的に向上(手すり先行標準化、ロック機能、隙間の少ない床 )。作業効率改善(軽量化、広いスペース )。保管運搬効率アップ。中高層建築や高い安全性が求められる現場で採用増。多くは仮設工業会の承認を受けています 。
・採用するメリット: 非常に高い安全性を確保可能 。作業効率向上で工期短縮期待 。保管・運搬コスト削減の可能性。
・デメリット、運用上の注意点: 初期導入コストが比較的高め。部材単体ごとの許容荷重が少ない。メーカー間で規格が異なり互換性に注意 。
【一覧比較】主要な足場タイプの相違点と選び方のヒント
ここでは、さきほどご紹介した主要な足場タイプ(くさび式、枠組、単管)の違いと選び方のポイントをまとめました。
選び方のヒント
・高さ: 低層は単管/移動式も可。中低層はくさび式、中高層以上は枠組/次世代が基本。
・広さ・形状: 広い敷地は枠組、狭い/複雑なら単管/くさび式。
・工期・予算: 短工期ならくさび式、コスト抑制なら単管(安全最優先)。
・安全性重視度: 最高レベルなら枠組/次世代、高水準なら先行手すり対応くさび式。
・作業内容: 重量物扱いは枠組、頻繁移動は移動式。

その他の足場について
上記以外にも特定の状況で使われる足場があります。
・鉄骨足場: 特定の方式名ではなく「鉄骨造建築で使われる足場」の総称。鉄骨にブラケット やクランプ で床を設ける「抱き足場(先行足場)」等が代表的 。枠組や次世代足場がベースになることも多い。鉄骨組立作業には専門の作業主任者が必要 。
・橋梁足場: 橋の点検、補修、建設用足場の総称。支保工足場や「吊り足場」が主 。現場環境に応じた特殊設計、工法が求められ、国土交通省の共通仕様書等で規定されている。
足場のサイズ規格に関して(枠組足場)
枠組足場の部材には、主に「インチ規格」と「メーター規格」の2つの寸法系列があります 。
・インチ規格: アメリカ由来の従来規格。
・メーター規格: 日本のメートル法に合わせた規格。
重要: 両規格の部材は寸法が微妙に異なり互換性が全くありません 。そのため、混用は不可できませんので、使用前に規格の確認が必須です。
足場の設置(建設)プロセスと安全管理
足場の設置から解体までの一般的な流れと、安全確保のポイントです。
一般的な設置・解体の流れ
1.計画: 現場調査、足場タイプ選定、組立図作成。
2.届出: 高さ10m以上かつ組立から解体まで60日以上かかる足場は、工事開始30日前までに労働基準監督署長への届出が必要 。
3.搬入: 計画に基づき部材を現場へ。
4.組立: 組立図と安全基準に従い構築。作業床は幅40cm以上、床材間の隙間3cm以下、床材と建地の隙間12cm未満を確保 。
5.点検: 組立後、作業前、悪天候後等に点検を実施 。
6.使用: 安全に留意し作業。最大積載荷重を守る 。
7.解体: 工事完了後、安全確認しつつ逆手順で解体、搬出。

安全に関する必須の留意事項
・資格:高さ5m以上の足場(吊り足場、張出し足場含む)の組立・解体・変更作業は、「足場の組立て等作業主任者」技能講習修了者による直接指揮が必要です 。また。足場の組立て、解体、変更作業に従事する全ての労働者は、特別教育の受講が必要です 。
・点検義務: 事業者は使用前や悪天候後等に点検義務があります(安衛則第567条、第568条)。注文者(元請等)にも組立・変更・解体後の点検義務があります(安衛則第655条)。2023年10月1日より、点検者の指名と、組立等後の点検者氏名の記録・保存が義務化されました 。
・保護具: ヘルメットは必須。高さ2m以上で作業床の設置が困難な場合や開口部付近など墜落の危険がある箇所では、「墜落制止用器具」(旧称:安全帯)の着用が義務付けられています 。原則としてフルハーネス型を使用し、特に高さ6.75m超(建設業)ではフルハーネス型が必須です 。フルハーネス型使用者は特別教育の受講が必要です 。
・悪天候時: 強風、大雨、大雪等の悪天候時には作業を中止することが定められています 。
・一側足場の制限: 2024年4月1日より、幅1メートル以上の箇所では原則として本足場(建地の両側に作業床がある足場)を使用し、一側足場の使用は幅1メートル未満の箇所や、障害物等で本足場の設置が困難な場合に限定されます 。
鉄骨工事における足場の考慮点
鉄骨工事での足場設置は特に以下の点に注意が必要です。
・工程調整: 鉄骨建方作業との連携・調整が重要。
・取り付け: 専用金具で鉄骨を傷つけず確実に取り付け。
・干渉確認: 後工程の部材等とぶつからないか図面で確認。
・作業主任者: 高さ5m以上の鉄骨組立て作業には「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」の選任が必要です 。
まとめ
この記事では、主要な足場タイプ(くさび緊結式、枠組、単管、吊り、移動式、次世代)を中心に、その特性、メリット・デメリット、選び方、安全管理まで解説しました。
足場は現場作業の基盤であり、安全の要です。労働安全衛生規則 やJIS規格 、仮設工業会の基準 を遵守し、各タイプを理解し、現場状況に合わせて最適に選択・運用することが、安全で質の高い工事の実現につながります。
工事において何より重要なのは安全の確保です。特に冬場は、足場の凍結による転倒・墜落といった特有のリスクも高まります 。具体的な安全対策については、こちらの記事も参考にしてください。
また、これらの足場を実際に組み立て、安全に作業を行うためには、ハンマーやラチェットレンチといった専門的な道具が不可欠です 。鳶職が使う道具については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
さらに、足場のプロフェッショナルである鳶職の仕事内容やキャリアパス、収入について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです 。

(文/週刊助太刀編集部)
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https://taito2019.com/scaffolding-daily-inspection
https://www.nikkosec.co.jp/law/
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