「石男くん」は今や建設系YouTuberの代表とも言える存在です。チャンネル登録者数は1万3000人を超え、講演やセミナーも人気になっています。
そんな石男くんですが、建設業の会社経営者という側面もあります。
今回はそんな石男くんに、建設業の未来について語って頂きました。
▼柿崎 赳さん
建設系YouTuber「石男くん」として活動中。インボイス制度の動画や、建設業で先進的な取り組みを行っている企業・個人を取り上げ、建設業の魅力を発信している。
目次
ボクシング推薦で大学に入学するも、オリンピックには惜しくも届かず
赤木:石男くんといえば、建設系YouTuberの代表格っていうイメージがありますが、もともと建設業の仕事を目指していたんですか?
石男くん:実家が山形の土木会社だったんですが、私自身は元々はボクシングで生きていくつもりでした。大学もボクシングで推薦入学していましたし、オリンピックを目指していましたので。
赤木:もともと建設業に進む予定じゃなかったんですね。
石男くん:ですが、予選で敗退してしまい、就職活動をすることになりました。ありがたいことに、就職活動もうまくいっていたのですが、そのタイミングで親から「家業が大変だから帰ってきてほしい」と言われて、実家に戻ることになりました。
赤木:会社の規模はどれくらいですか?
石男くん:当時は施工管理者が20人くらいで、職人さんは70〜80名くらいですね。今は施工管理者が40人、職人さんが100人くらいの規模になっています。
赤木:かなり大きな規模なんですね。
何もできず、現場で立ってるだけに
石男くん:実は、家業に入る時、「大変な状況だし、田舎の建設業だし、すぐに活躍できるようになるだろ」って甘く見ていました 笑
赤木:若いですし、大学で学んだ幅広い知識が使えるだろうって思っちゃいますよね。
石男くん:でも、当たり前のことなんですが、現場では経験が無いと何もできません。社内の教育体制も無い中だったので、1日中、立ってるだけで価値を出せない状況でした。
赤木:この規模感の会社でもそうなんですね。
石男くん:そこで育成の重要性を学びました。その後、仕事を学びながら、未経験の若手が入社しても学んでいけるような体制、文化づくりを行っていきました。
赤木:先輩社員とぶつかったりしませんでしたか?
石男くん:最初は軋轢もありましたね。でも、僕自身が全く諦めなかったので、最終的には良い着地点に収まりました。
コロナ禍がきっかけでYouTubeを始める
赤木:YouTubeを始めたきっかけは何かあったんですか?
石男くん:コロナ禍で現場が止まったことがきっかけでしたね。最初はYouTubeの事は全く分かってなくて、HIKAKINさんの名前も存じ上げなかったくらいです。
赤木:それは凄いですね。最初から今のスタイルで発信されていたんですか?
石男くん:YouTubeを始める時に、建設系にするか、ビジネス系にするか、ネガティブな発信にするか、ポジティブな発信にするかで悩んでいました。建設系にすると登録者の上限が35,000人くらいになってしまう。一方で、ビジネス系だったら100万人以上も夢ではない。
赤木:視聴者の母数が全く違いますもんね。発信内容も、ネガティブな内容の方が再生数が増えやすいですし。
石男くん:それでも、面白いことをしたいですし、建設業のためになる事を語りたいという思いから、建設業に特化して、「明るくポジティブに」をモットーとするチャンネルを作りました。
赤木:開設してからいきなり人気になったんですか?
石男くん:最初は全く反響がなくて、1本の動画の再生数が4回だったりすることもありました。
赤木:いまでは信じられないですね。そんな時でもやめようとは思わなかったんですか?
石男くん:そうですね。成果があがらないものを続けるのはキツいとは思いましたが、そもそも挫折はネタだと思っているので。あとは、無理をしないことでしょうか。
赤木:無理をしない?
石男くん:何年も動画を作り続けるのは難しいですから、頑張ってやろうと思った時にネタがないなら、次の週に出したら良いと思ってやっていました。
赤木:なるほど、燃え尽きたりしないようにペース配分するのは大事ですね。
石男くん:結果として、今は色んな方にコラボの話を頂けていますし、他県で大きな仕事を取ったら下請けさせてほしいとDMを頂いたりしているので、大きな成果に繋がっているなと感じます。CCUS認定アドバイザーになることもできましたし。
赤木:これもポジティブな発信を続けたからこそでしょうね。
石男くん:他には、「建設トップランナーフォーラム」という会合にお招き頂くことになっています。建設トップランナーフォーラムには、先駆的な取り組みをする経営者だけではなく、国土交通大臣や農林水産大臣、事務次官やキャリア官僚の方々も参加されるような場です。
赤木:まさにトップランナー。
石男くん:YouTubeをやっていなかったら、こんな場で話すことはできなかったですからね。あとは、土木学会の「魅力向上プロジェクト」にお呼び頂いたり、アカデミックな領域の会合にも呼ばれるようになってきました。
赤木:建設業としても、石男くんのように業界を良くしたいと発信している人を求めていたんでしょうね。
ネガティブな発信より、建設的なアクションを起こしていく
石男くん:そもそも、建設業ではまだ発信者が少ないと思います。
赤木:確かに、他の業界だともっと多いかも。
石男くん:TwitterもYouTubeもまだ建設業ではまだブルーオーシャンで、タイムマシン経営(他の業界での成功事例を応用する手法)が可能です。ウッドショックやコロナなどネガティブな要因もありますが、だからこそ、次のアクションプランを発信していく事が大事です。
赤木:石男くんはそれでうまくいっていますからね。
石男くん:それから、政治に関心を持つことも必要ですね。参議院議員の中で、国土交通省のOBはごく少数です。建設業の現場の声を、国政に届ける必要があります。
赤木:確かに、政治に参画する意思が必要なのか。
石男くん:建設業は歴史が長い業界です。漫画の「キングダム」の中にも、万里の長城の建設土木の仕事がありました。それくらい歴史のある業界なので、自然と保守的になりやすい部分はあると思います。
赤木:キングダムの例えはとても面白いです。例えば、業界を良くしていきたいと思ってる人たちに対して、石男くんならどんなアドバイスをしますか?
石男くん:繰り返しになりますが、人の文句は言わずに発信をすることですね。その上で、もし何かやりたい事があったら声をかけて欲しいです。
赤木:まだ実績がない発信者の人だと、石男くんとwin-winになりづらいと思うんですが、そういう人はどうしたらいいですか?
石男くん:win-winになれるのが理想ですが、企画が面白かったり、情熱があれば僕は構わないです。僕もいままで、そうやって色んな人達に助けてもらってきたので。
サステナブルな建設業を目指して
赤木:石男くんが今後やっていきたいことやビジョンみたいなものってありますか?
石男くん:インフルエンサーとしては、アカデミックな領域や、他の産業、助太刀みたいなプラットフォーマーと関わっていけると面白いなと思います。
赤木:新しい繋がりでまた可能性が広がりそうですね。
石男くん:会社としては、「サステナブル(持続可能)」な会社経営を目指していきたいです。
赤木:サステナブルですか?
石男くん:ありがたいことに、田舎の中小企業である私の会社でも、新卒のエントリーが200件きて、インターンも40名くらいくるようになりました。彼らが成長した時に、面白い仕事ができるようにしていきたいですね。その後、彼らの下につく若者に彼らが面白い仕事を提供してあげられるような、サステナブルな会社にしていきたいです。
赤木:凄く良い目標ですね!
石男くん:「昨日よりも面白くするために、今日を全力で生きて、明日のチャレンジを忘れない」というモットーを掲げていますが、そんな若手を増やしていきたいですね。建設業は間口が広く、学歴も関係ありません。だからこそ、建設業に入ってくる若者が充実して働き続けていけるような建設業にしていきたいです。
[文/赤木 勇太]
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