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「会社・社員・地域」三方良しの経営が、人が集まる「本当の理由」

人手不足が叫ばれる建設業界において、愛知県豊橋市の電気工事会社、株式会社K’s電設は異彩を放っている。

今年(2025年1月時点)だけで既に8名の新しい仲間が加わり、社員数は34名。驚くべきは、その定着率だ。創業以来、離職者はわずか数名。入り口である「採用」の勢いがありながら、出口である「離職」が極めて少ないという、理想的な成長を続けている。

なぜ、この会社には人が絶えないのか。代表の見目(けんもく)氏が実践する、常識破りの組織作りを紐解く。


見目 昌彦氏

17歳から一人親方の元で電気工事の修行を積み、35歳で独立。

2012年にK's電設社を創業する。

目次
  1. 「三方よし(売り手・買い手・地域)」に基づいた地元貢献
  2. 既存社員の満足度向上が採用力向上に直結する
  3. 採用における意識の転換
  4. 現場こそが「最強の求人媒体」である
  5. 「プロの層」があるからこそ、新人を受け入れられる
  6. 社長が現場にいるから「不満」が出ず、「交渉」が円滑になる
  7. 「3〜4人の壁」をぶち破り、拡大し続ける責任
  8. 【核心】戦略と意識した瞬間に、その施策は陳腐化する
  9. その「背中」が次代の仲間を連れてくる

「三方よし(売り手・買い手・地域)」に基づいた地元貢献

K’s電設は、テレビCMでの「子どもSOSダイヤル」支援や、乳児院への寄付、メディア露出を積極的に行っている。 一見すると、採用とは無関係の地域活動に思えるが、実はこれが「親の安心感」という若手採用における最大の障壁を突破する鍵になっている。

未経験の若者が入社を検討する際、本人以上に慎重になるのがその親だ。しかし、「あのCMの会社」「地域のために動いている会社」という認知があれば、それは一転して強力な信頼に変わる。

また、新倉庫を地域住民の「避難所」として設計するなど、地域に深く根ざす姿勢は、豊橋の街を走る社用車への親しみにも繋がっている。こうした姿勢が、結果として「この会社なら安心だ」という地域ブランドを強固にしているのだ。

(K’s電設Instagramより抜粋)

こういった広報活動も、無理のない範囲で行っている。InstagramやHPの更新は担当社員をつけているが、「忙しければやらなくていい」と伝えている。「広報を意識しすぎると、コンテンツが無機物になる」。あくまで、会社の「本質」が伝わることだけを大切にしている。

既存社員の満足度向上が採用力向上に直結する

求人広告に多額のコストを投じる前に、まず「今いる社員が友達に自慢したくなる環境」を作る。 これがK’s電設の鉄則だ。

シミュレーションゴルフや酸素カプセル、洗練された事務所。これらは単なる福利厚生ではなく、社員が「ウチの会社、すごいでしょ」と胸を張るための投資である。

社員が自分の会社に誇りを持てば、その幸福感は必ず現場で外部へと漏れ出す。楽しそうに働く姿を見た他社の職人が「一緒に働かせてくれ」と吸い寄せられてくる循環こそが、最も純度の高い採用活動になる。

採用における意識の転換

面接は「人を選別する場」ではなく、会社が「候補者に選ばれる場」である。 

このマインドセットの転換が、驚異的な入社率の根源にある。

K’s電設の面接に履歴書は不要だ。それどころか、「書類で何が分かるのか。まずは実際に働いてみよう」というスタンスで間口を広げ、まずはカジュアルな面談で一人の人間として向き合う。そこで見目氏は、自身の生い立ちをさらけ出し、さらには役員クラスまで含めた「実物の給与明細」をその場で開示する。(※本人同意の上、個人が特定されない形で提示)

嘘のない事実を提示することで、「面接をしてもらっている」という謙虚な姿勢を貫く。この圧倒的な透明性と対等なスタンスが、候補者の迷いを消し、共に働く仲間としての決意を固めさせている。

現場こそが「最強の求人媒体」である

見目氏は、今も現役で現場に立ち続ける。それは、現場こそが「最高の職人」と出会える場所だからだ。

「社長が現場に出て、楽しそうに、かつバリバリ働いている。その姿を他社の職人が見て『一緒に働かせてくれ』と声をかけてくる。現場で知り合った人間は即戦力ですから、来てくれたら絶対に逃しません。もちろん、信義にもとるような引き抜き行為は行いませんが」

社長自らが広告塔となって現場でプロを惹きつける。K's電設にはそうして「腕のある経験者」が集まってくる。

「プロの層」があるからこそ、新人を受け入れられる

今年入社した8名の多くは未経験の新人だが、K's電設は彼らの教育に困っていない。それは、現場で応募してきた「プロ」たちが教育の受け皿になっているからだ。

「経験者がいて、有資格者の職人がいる。そういう層が厚いからこそ、未経験の若手が入ってきても、現場でしっかりと面倒を見ることができる。教育に力を入れられないのは会社の責任です。うちはここまで強くなったからこそ、中途も新人も自信を持って雇えるんです」

社長が現場でプロを採り、プロが新人を育てる。この「現場発」の採用・教育サイクルこそが、同社の急速な拡大を支える実利的なエンジンとなっている。

また、具体的な教育についても、教育担当をつけた上で、1週間ごとに新人と教育担当それぞれに現場での様子をヒアリングする。

その上で、必要に応じてより相性の良い教育担当をつけることで、新人の離脱を防いでいる。

(K’s電設プロモーション動画より抜粋)

社長が現場にいるから「不満」が出ず、「交渉」が円滑になる

見目氏が現場に出続けることには、組織マネジメント上においても大きな利点がある。

  • 社員の不満を未然に防ぐ: 「中小零細である以上、社長が近くにいないと従業員から不満が出ます。『社長が何をやっているか分からない』という状況が一番危ない。僕が現場にいて、一緒に汗を流していれば、それだけで一体感が出る。不満が出る隙がないんです」
  • 元請けとの折衝が強くなる: 「現場で上がった従業員の声を、その場でお客さん(元請け)に伝えることができる。『自分が現状その場にいる』という話をするから説得力が違う。社長が現場の頭を張っているだけで元請けさんにも喜ばれるし、バックアップも得やすくなるんです」

現場のリアルな声を拾い、即座に交渉に活かす。そして、その背中を社員に見せ続ける。この距離の近さが、組織の風通しと対外的な信頼を同時に担保している。

「3〜4人の壁」をぶち破り、拡大し続ける責任

建設業界には、「3〜4人規模」で満足してしまう会社も多い。しかし、見目氏はそこに警鐘を鳴らす。

「社長が小銭を持って満足したら、社員の給料はそこで止まる。若い子を入れて、彼らが将来しっかり稼げるようにするには、会社を大きくし続けるしかない。ふんぞり返るには、まだ早すぎるんです」

社員を食わせる、給料を上げ続ける。その責任を果たすために、社長自ら今も現場に出て、誰よりも楽しそうに汗を流す。その背中に、若手は自身の未来を重ねている。


【核心】戦略と意識した瞬間に、その施策は陳腐化する

これほど見事な「仕組み」を聞けば、誰もが「緻密な経営戦略だ」と思うだろう。しかし、見目氏の口から出た言葉は、意外なものだった。

「戦略としてやったら、それはもう偽物。作り物っぽくなった瞬間に、職人はついてこなくなりますよ」

見目氏は、採用のために給与を晒しているわけではない。定着のためにシミュレーションゴルフを作ったわけでもない。 「社員から自分がかっこよく見られたい」「嘘をつくのが嫌だ」――そんな社長自身の、極めてピュアな感情からすべてが始まっている。

「計算してやっているわけじゃないんです。自分がいいと思うことをやり、従業員に『かっこいい』と思われたい。その純粋なマインドこそが重要で、それを『戦略』と呼んでパッケージ化した瞬間に、中身の魂は死んでしまう」

「狙い」を持って施策を打つのではなく、社長自身の「生き方」そのものを会社に反映させる。その嘘のなさが、結果として最強の求人媒体となり、最高の定着戦略となっているのだ。


その「背中」が次代の仲間を連れてくる

助太刀社員のような採用のプラットフォームを「窓口」として活用し、出会いのきっかけを最大化させることは、現代の経営において欠かせないプロセスだ。しかし、その窓口の先にある自社に、人を惹きつける「本物の熱量」があるかどうかが、すべてを決める。

「まずは100人の職人集団を目指したい。職人を抱えている会社は、やっぱり強いですから」

悲観的な声も多いこの業界で、見目氏は軽やかに、そして誰よりも楽しそうに未来を語る。 「採用に困ったら、いつでも俺に直接聞きに来て」 そう笑う社長の「かっこいい背中」がある限り、社員は迷わず、この会社と一緒に大きくなっていく未来を信じられるのだろう。

(K’s電設プロモーション動画より抜粋)

助太刀タイムズ編集部

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