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2022.1.17

建設業が実施すべき冬の安全対策とは?過去の冬季労災事例や労災防止対策を紹介

2022年1月17日更新

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建設現場において、冬になると毎年注意が必要になるのは冬季特有の要因による労働災害です。

路面凍結による交通事故、屋根の除雪作業による墜落・転落事故、移動中に足を滑らせる転倒災害などは重大な事故であり、毎年多くの死亡者も出ているほど危険です。

このような労働災害を防ぐためにも、建設現場における冬の安全対策について講じる必要があります。具体的には、以下のような安全対策を取ることが求められます。

・転倒災害防止対策
・交通労働災害防止対策
・墜落・転落等災害防止対策
・重機等による労働災害防止対策

今回の記事では、これら冬の安全対策について詳しく解説します。実際の冬季労災事例も見ていき、シチュエーション別の具体的な防止対策についても紹介するので、現場の安全を確保したい建設業の方はぜひ読んでみてください。

建設業における冬の安全対策とは

冬季では業界問わず、凍結による転倒、自動車のスリップや視界不良時の交通事故、除雪作業に伴う転落事故、屋内での内燃機関、練炭、ジェットヒーターによる一酸化炭素中毒など、様々な事故の発生が考えられます。

これらは冬季特有の労働災害で「冬季災害」とも呼ばれています。

建設業においても同様で、これらの冬季災害の発生を防ぐためにも、安全対策をとることが求められます。建設業はただでさえ労働災害の発生件数が他の業界と比べても多い業界なので、作業の危険度が高まる冬場は特に安全対策を講じる必要があるでしょう。

建設業の冬季労災事例

ここでは、実際に起きた冬季労災の事例を5つをシーン別に紹介します。これらは冬の建設業現場で見られる事例なので、どのような状況で事故が発生しているのかを把握することで対策につなげていきましょう。

転倒災害事例

「建設現場で歩行中に凍結路面で転倒して頭部を強打」
地面が凍結している冬場では、歩行の際にも注意しなくてはなりません。転倒した際に打ち所が悪いと、最悪命を落とすことにもなりかねません。

この事例の場合、被災者は屋外にあるごみ集積場にごみを捨てに行ったところ、凍結路面で転倒して頭部を強打しました。

「除雪作業中に転倒して頭部を強打」
被災者は建設現場にて除雪作業をしていたところ、排雪した直後に凍結路面で転倒し、頭部を強打しました。

交通労働災害事例

「トンネルにて凍結路面でスリップし、対向車と衝突」
建設現場に向かうために国道のトンネル内をトラックで走行していたところ、凍結路面でスリップをしてしまった事例です。

車はスリップしたことで対向車線にはみ出してしまい、正面からきていたトラックに衝突。車のドライバーは軽傷で済みましたが、トラックのドライバーは命が助かりませんでした。

墜落・転落災害事例

「雪下ろしの作業中に屋根から転落」
高所からの墜落・転落も建設業によくある事故の一つです。この事例では、梯子で屋根の上に登って雪下ろしをしていたところ、屋根の軒先から墜落しています。

「屋根の雪下ろし作業の際に雪と一緒に転落」
軒先の雪を屋根の下に落としていたところ、屋根の上にあった雪が滑り落ちてきて作業していた作業員が落屑に巻き込まれてしまいました。

「屋根の雪下ろし作業中に屋根を踏み抜いて墜落」
被災者は屋根で除雪作業中に屋根板を踏み抜いてしまい転落。約5.7メートルの高さから墜落しました。

重機による労働災害事例

「排泄した雪の上からブルドーザーが転落」
被災者は、ブルドーザーで雪を押し上げて移動させていたところ、頂上付近まで雪を押し上げて後退するときに横滑りしてしまい、ブルドーザーが転落しました。

一酸化炭素中毒事例

「建物内でストーブを使用したことによる一酸化炭素中毒」
冬場に意外と気をつけなければならないのが、ストーブなどの使用による一酸化炭素中毒です。

この事例の場合、被災者4人は工場のシャッターや通用口を閉めた状態でストーブを使用し、作業をしていました。その後、作業者全員が頭痛、めまい、動悸、吐き気を強く感じたそうです。医療機関を受診したところ、一酸化炭素中毒で全員が入院してしまいました。

冬の労災防止対策一覧

最後に、厚生労働省北海道労働局が紹介している、冬季の労災防止対策を紹介します。ここでもシチュエーション別にとれる対策を紹介するので、冬に現場で作業する際にはぜひ意識してみてください。

参考:厚生労働省北海道労働局・労働基準監督署 「冬季特有の労働災害を防止しよう!」

転倒災害防止対策

・建設現場、駐車場、出入り口などの凍結しやすい場所や滑りやすい場所の確認
・「危険マップ」を作成して作業員に周知すること
・靴は保温性が高く、滑りにくいものを使用すること
・小さな歩幅で慌てずに歩くこと
・凍結しやすい道路には融雪剤や砂などを散布して凍結防止対策を行うこと
・凍結しやすい屋外の階段にはすべり止めを取り付けること
・服やズボンに手を入れたままや、両手に物を持ったまま歩行しないこと

転倒災害は凍結しやすい場所で発生しています。そのため、まずすべきことはどの場所が危険な場所なのかを見極め、周知徹底することです。

作業を開始する前には、転倒しないために注意するべき点を呼びかけることも重要です。

交通労働災害防止対策

・冬道での運転はスピードに注意して走行すること
・現場や目的地に向かう時は時間に余裕をもって行動すること
・凍結時は特に車間距離を意識して運転をすること
・交差点などの対向車が出てきそうな道路では減速すること
・雪が高く積み上げられているところは視界が悪くなるので、スピードを減速・加速する時には特に注意すること
・冬道では特にKY(危険予知)を心掛けて安全運転をすること
・冬道に適したタイヤを使用するなど日々の点検を念入りにすること
・過去の災害等を参考に、走行する道路の交通安全情報マップを作成して周囲の安全運転教育に努めること

冬季災害では凍結によるスリップで重大事故につながります。また、交通労働災害は一般の方にも迷惑をかけてしまうので特に注意が必要です。

日々の点検から運転まで、基本的な部分を日常的に確認することを周知徹底して事故を防ぐとよいでしょう。

墜落・転落等災害防止対策

屋根の除雪作業における墜落・転落災害防止

・屋根の除雪作業を行う際は安全帯を使用して墜落防止をする
・親縄を設けて安全帯を使用する
・保護帽を着用する
・移動梯子の転倒防止のため、梯子の上部を固定して上端60cm以上突き出すこと
・屋根の除雪作業を行うときは監督者を配置する
・屋根の除雪は上から下に行う
・屋根の除雪作業は上下で行わない

冬季における屋根などの高所作業は特にリスクが高まります。凍結に対して注意喚起をするとともに、安全対策を徹底する必要があります。

特に安全帯の取り付けなどに気を付けて防止対策に取り組んでください。

足場等における墜落・転落災害防止等

・足場での作業前に足場板上の除雪を行う
・凍結などで滑りやすくなっている場合は対策をしてから使用すること
・作業前の足場や手すりの点検を行う

足場は凍結しやすい場所の1つです。作業前の確認を徹底することで危険予知に取り組む必要があります。

重機による労働災害防止対策

①視界の確保等

・重機での作業開始前には、付着した氷塊を除去してから作業を行うこと
・使用前に重機の点検を行うこと
・フロントガラスやリヤガラスの熱線に異常がないか確認してから使用すること

冬季は雪やフロントガラスの凍結により視界が狭くなってしまい、事故につながりやすくなります。重機を使用する前に視界の確保を再周知するようにしてください。

接触の防止

・危険個所に立ち入らないようにすること
・誘導者は運転者から容易に判別できるように色彩の手旗などを使用する
・誘導者は運転者から識別できるように蛍光ベストやビームライトを使用する
・ヘルメットも同様に識別しやすいものを使用すること

冬季は降雪などで誘導者や周囲の人間を見落としてしまうことがあります。

そのため、運転者に周知するとともに誘導者にも認識しやすい工夫をして対策を行うとよいでしょう。

重機の転落防止等

・路肩などから転落することを防ぐため、誘導者を配置すること
・路肩には位置を明確するためにポールなどの標識を設置すること
・過去に雪崩が発生している場合は事前に対策・修理をすること
・降雪が多くなってきて雪崩が予想される場合は作業を中止すること

冬季は凍結によるスリップが増えます。また、降雪による災害も増えるので、しっかり周知をして対策するようにしてください。

一酸化炭素中毒防止対策

・作業員を選任し、作業手順や換気方法などを作成して作業者に指示をすること
・作業者には安全衛生教育を実施して周知、教育をすること
・関係場所入り口には「一酸化炭素中毒危険場所立ち入り禁止」などの表示をおこなうこと
・室内などの自然換気が不十分な場所では内燃機関を有する機会は使用しないこと
・室内や倉庫などで重機を使用する場合は換気を十分に行うこと
・防寒のために締め切った屋内で作業を行う場合、ガス燃焼機器や燃焼式暖房機器の使用には十分に注意をすること

特に寒さの厳しい時期は、屋内でできる作業は作業場などで行うことがあります。

その際に、暖房機器を使用して作業をすることもありますが、十分に換気を行わないと一酸化炭素中毒になる恐れがあります。

まとめ

建設業は常に危険と隣り合わせの仕事です。そんな危険が伴う業界なので、冬場となるとよりいっそうの注意が必要になります。

安全管理を徹底しないと、今回紹介した事例のようなことが起きかねません。作業前に危険となりうる場所や作業の確認、事前に危険を周知・共有、作業中の安全意識などを徹底して、労災の発生を防いでいきましょう。

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