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一人親方が独立1年目に行うべき手続き|開業時・開業後のポイントを弁護士が解説

2023年4月30日更新

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建設業の個人事業主(=一人親方)として独立する際には、主に税務関係の届出・申請・申告などが必要になります。

今回は、一人親方が独立1年目に行うべき手続きをまとめました。

一人親方としてのが開業時に行うべき手続き

一人親方が個人事業主として開業する際には、以下の届出・申請・申告等の手続きが必要となります。

(1)税務署への届出・申請
・開業届
・青色申告の承認申請
・給与支払事務所等の開設届出
(2)都道府県税事務所への申告
・事業開始の申告
(3)年金・保険関係
・国民年金への新規加入
・国民健康保険への新規加入

税務署|開業届・青色申告の承認申請・給与支払事務所等の開設届出

一人親方が個人事業主として開業するに当たり、税務署に対して提出すべき書類は以下のとおりです。

(1)個人事業の開業・廃業等届出書*1
事業開始後1か月以内に提出します。
(2)所得税の青色申告承認申請書*2
青色申告を行う場合に、事業開始後2か月以内(1月15日以前に事業を開始した場合には、その年の3月15日まで)に提出します。
(3)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書*3
家族などへ給与を支払う場合に、給与の支払い開始から1か月以内に提出します。

これらの税務署提出書類は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)*4を通じて提出することもできます。

都道府県税事務所|事業開始の申告

一人親方が個人事業主として開業する際には、都道府県税事務所にも「事業開始(廃止)等申告書」*5を提出しなければなりません。
提出期限は、事業の開始日から15日以内です。

年金・保険関係|国民年金・国民健康保険

建設会社を退職して一人親方として独立する場合には、厚生年金保険・健康保険から国民年金・国民健康保険への切り替えが必要になります。

(1)国民年金*6
居住地の市区町村役場で加入手続きを行います。収入等にかかわらず、国民年金保険料*7は一定です。
(2)国民健康保険
市区町村の国民健康保険か、または国民健康保険組合に加入します。一人親方の場合、「建設連合国民健康保険組合」*8などに加入できる場合があります。

国民健康保険の保険料は、市区町村のものは収入に応じて決まるのに対して、国民健康保険組合のものは加入者の人数(家族を含む)に応じて決まります。

収入が多い方の場合、市区町村の国民健康保険の保険料よりも、国民健康保険組合の保険料の方が安くなることが多いでしょう。
資格要件を満たす限りどちらに加入してもよいので、ご自身にとってメリットのある方をご選択ください。

一人親方が1年目の途中で行うべき手続き

一人親方が開業1年目(開業日~その年の12月末)の途中で行うべき手続きは、それほど多くありません(2年目以降は、住民税の納付や予定納税*9などが発生します)。

ただし、家族などに源泉徴収の対象となる給与を支払っている場合には、原則として翌月10日までに、税務署へ源泉所得税*10を納付しなければなりません。

<給与が源泉徴収の対象となる場合>
(1)甲欄(=給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合)
扶養親族等の数に応じて、月額の給与等が以下の金額以上の場合
0人:8万8000円以上
1人:11万9000円以上
2人:15万9000円以上
3人:20万5000円以上
4人:25万1000円以上
(2)乙欄(=給与所得者の扶養控除等申告書を提出していない場合)
常に源泉徴収の対象となる

なお、税務署によって源泉所得税の納期の特例の承認*11を受けていれば、以下の要領で源泉所得税をまとめて納付することができます。

(a)1月から6月までに徴収した源泉所得税
→7月10日まで
(b)7月から12月までに徴収した源泉所得税
→翌年1月20日まで

一人親方の1年目が終了した段階で行うべき手続き

一人親方の1年目が終了したら、以下の手続きを行う必要があります。

(1)給与支払報告書の提出
(2)所得税の確定申告

給与支払報告書の提出|翌年1月末日まで

家族などに給与を支払っている場合は、以下の書類を従業員が居住する市区町村に給与支払報告書*12などを提出します。提出期限は、給与を支払った年の翌年1月末日です。

<提出書類>
・給与支払報告書(総括表)
・給与支払報告書(個人別明細書)
※受給者1名につき1枚
・普通徴収切替理由書
※普通徴収の該当者がいる場合のみ

所得税の確定申告

1月1日から12月31日までに得た所得については、翌年3月15日までに所得税の確定申告*13を行う必要があります。マイナンバーカードを持っている方は、e-Tax*4を通じて電子申告するのが便利です。

一人親方としての所得は、売上(請負報酬など)から経費などを控除した金額で、原則として事業所得となります。
青色申告を行っている場合には、電子申告などの要件を満たすことを条件として、最大65万円の青色申告特別控除*14を受けることができます。

一人親方はインボイス制度の登録を申請すべきか?

2023年10月1日から「インボイス制度」*15の施行が予定されており、一人親方などの零細事業者に生じる影響が懸念されています。

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書等(インボイス)の保存を義務付ける制度です。適格請求書等は、消費税の課税事業者のうち、税務署の登録*16を受けた者だけが発行できます。

適格請求書等を発行できないと、消費税の仕入税額控除を受けたい取引先から敬遠される可能性があります。その一方で、インボイス登録を受けるためには消費税の課税事業者に移行しなければなりません。
そのため、年間売上が1000万円以下の免税事業者*17である一人親方にとって、インボイス登録すべきか否かは悩ましい問題です。

インボイス登録の是非は、事業や取引先などの状況を踏まえて個別に判断するしかありません。以下の記事では、インボイス登録すべきか否かの判断基準などを解説していますので、ご参照ください。

参考記事:
インボイス制度とは|小規模建設業者への影響・必要な準備などを弁護士が解説

まとめ

一人親方としてが独立する際には、税務署・都道府県税事務所・市町村・年金事務所など、さまざまな役所へ届出等を行う必要があります。必要に応じて専門家のサポートを受けながら、漏れのないように開業手続きを進めてください。

*1参考)国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm*2参考)国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm*3参考)国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm*4参考)国税庁「e-Tax 国税電子申告・納税システム」
https://www.e-tax.nta.go.jp/*5参考)東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき 個人事業税に関する手続 事業を開始した場合」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/index05.html#L1
*6参考)日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html
*7参考)日本年金機構「国民年金保険料」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
*8参考)建設連合国民健康保険組合「加入方法・保険料 加入できる方」
https://www.kr-kokuho.or.jp/join/
*9参考)国税庁「No.2040 予定納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2040.htm
*10参考)国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
*11参考)国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm
*12参考)東京都北区「給与支払報告書の作成・提出」
https://www.city.kita.tokyo.jp/zeimu/kurashi/zekin/jumin/hokokusho/sakuse.html
*13参考)国税庁「所得税の確定申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
*14参考)国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
*15参考)国税庁「インボイス制度の概要」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm
*16参考)国税庁「申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm
*17参考)国税庁「No.6501 納税義務の免除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

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