これから測量士補の資格取得を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
測量士補とは
測量士補は測量士が作成した計画にもとづいて、測量業務を実施する人物です。測量士補として業務を行うには、試験に合格することが必要です。資格としては、測量士が上位資格となります。測量士補と測量士の違いは、測量計画を作成できるかどうかです。測量計画とは、測量法第36条により、測量の目的や期間などの実施計画をまとめた書類です。
測量士は測量計画を作成できますが、測量士補は測量計画の作成ができません。そのため、測量士が作成した測量計画をもとに、実際の測量業務を行うわけです。
測量士補は現場で測量をすることが仕事であるため、道路工事の現場や広い空き地のようなところで三脚をたて、測量機を覗いてさまざまな数値を測ります。測量機は、「レベル」「トランシット」など、高低差や角度を測るために異なる機器を使い分けます。
他にもダム、橋、道路、トンネル、鉄道、ビル、家屋などのさまざまな現場では、最初に測量を行います。工事予定地の正確な緯度・経度、高さ、長さ、面積を測量の高度な知識をもとに測定して図面などを作成します。
なお、測量士補は建設会社だけではなく、測量事務所、測量会社、地図作成会社、建設コンサルタント会社などへの就職・転職が可能です。それらの会社は、測量を請け負い、適正に業務を行うため、事業所に最低1名以上の測量士補や測量士を置かなければなりません(測量法第55条の13第1項)。また、できるだけ多く在籍するほうが多くの案件を持つことができます。
そのため、測量士補の採用を積極的に行うケースがあります。測量士補は業務の特性上、以下のような方におすすめです。
・几帳面な人
・正確な作業を続けることができる人
・協調性のある人
・測量機器や三脚などを担ぎながら歩き回る体力がある人
上記に加えて、扱う機材などが多くの場合で重複する土地家屋調査士、業務の幅が広がる宅建の有資格者も挑戦してもいいでしょう。逆に測量士補の資格を取得することで、土地家屋調査士の試験において一部の試験が免除になります。
土地家屋調査士へのステップアップとして測量士補に挑戦する方も少なくありません。ちなみに、測量士補の年収は300〜500万円と決して高い水準ではないものの測量士へのステップアップや転職などをすれば年収も向上するでしょう。
測量は建設・建築の現場では欠かせない存在であり、近年ではカーナビや地図アプリなど工事以外でも測量データが必要な場面が増えています。測量士補として活躍する機会は増えており、将来性もあるといえるでしょう。
測量士補試験の難易度/合格率
ここからは測量士補試験の難易度や合格率、試験内容をご説明します。試験概要などを把握して、受験の際に活かしてください。
試験の難易度/合格率
2017年から2021年に実施された測量士補試験の合格率は以下をご覧ください。
実施日 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
2021年9月12日 | 12,905人 | 4,490人 | 34.8% |
2020年11月22日 | 10,361人 | 3,138人 | 30.3% |
2019年9月12日 | 13,764人 | 4,924人 | 35.8% |
2018年5月20日 | 13,569人 | 4,555人 | 33.6% |
2017年5月21日 | 14,042人 | 6,639人 | 47.3% |
※参考:過去の試験問題及び回答例
以上のように測量士補はおおむね30%台の合格率です。測量士の合格率が10%前後であることを考えると合格しやすいと考えられますが、測量に関する幅広い知識が必要な試験です。試験内容は後述しますので、参考にしましょう。
なお、測量士補試験に合格しただけでは、現場で業務をこなすことができません。測量士補と測量士は、資格取得後に国土地理院に登録する必要があります。
どんな問題が出る?
測量士補の試験科目は以下のとおりです。
・測量に関する法規
・多角測量
・汎地球測位システム測量
・水準測量
・地形測量
・写真測量
・地図編集
・応用測量
上記の試験科目から28問が出題されて、マークシート方式(5肢択一式)となっています。1問あたり25点の配点、700点中450点以上の正解、つまり28問中18問の正解で合格です。
例年の合格率や配点の高さ、出題科目の幅広さなどから試験難易度は高く感じますが、実際の試験問題は過去問の焼き直しが多く、対策しやすいといえます。過去問を繰り返し行うことで、十分に突破できるでしょう。
なお、28問中10問は計算問題となり、計算問題に課題を持っている方は入念な対策が必要です。計算問題のレベルは高校生が学習する公式や三角関数を理解しておいてください。試験には電卓が利用できないため、計算力を養うことがポイントです。
国土地理院のホームページでは、過去5年分の試験問題と解答例が掲載されています。過去問の分析や反復練習に活用してみてください。
一方でなかなか合格できない方もいますが、その理由もご紹介します。まずは試験範囲の広さがあげられます。測量士補は8つの分野から満遍なく出題され、科目間でのつながりもほとんどありません。
よって、全体の知識を網羅しておく必要があるのです。不得意な分野があると、合格しにくいといえるでしょう。特に測量に関して初めて学習をする方は苦戦するかもしれません。
また、測量士補を受験する方は、高校や専門学校といった学生が多く、大学で測量を専攻している方は無試験により測量士補で登録できるためわざわざ受けません。測量士補を受験する学生は、未知の分野であり慣れない科目を学習することも考えられます。
学習方法なども含めて対策が十分にできない方は合格しにくくなるでしょう。
※参考:過去の試験問題及び回答例
他の資格と比べて難しい?
ここからは、測量士補と他の資格を合格率などで比較していきます。測量士補、測量士、土地家屋調査士、宅地建物取引士の4つの資格をみていきます。
測量士補 | 測量士 | 土地家屋調査士 | 宅地建物取引士 | |
2021年 | 34.8% | 18% | – | 17.9%(10月実施分) |
2020年 | 30.3% | 7.7% | 10.4% | 13.1%(12月実施分) |
2019年 | 35.8% | 14.8% | 9.7% | 17% |
2018年 | 33.6% | 8.3% | 9.5% | 15.6% |
2017年 | 47.3% | 11.7% | 8.7% | 15.6 |
合格率だけを比較すると、測量士補が非常に高いことがわかります。まずは上位資格である測量士と比較すると、試験形式が異なります。測量士の試験は選択式だけではなく記述式の試験も加わります。
測量士の難易度の高さは、測量技術という高度な分野から出題されることが要因です。既存の知識だけではなく最新の知見が必要であることも難易度の高さに影響しているでしょう。地理や数学など知識が応用されることもあり、難しい論点が含まれることもあります。
次に土地家屋調査士との比較をしてみます。測量士補の資格を取得すると土地家屋調査士では午前試験が免除されます。合格率をみると、非常に難しい試験であることがわかります。
土地家屋調査士の合格率をさげているのは、足切り制度でしょう。午後の部の試験では択一問題と記述問題にそれぞれ基準点が設定されており、どちらか一方でも基準点に満たなければ不合格となります。
最後に宅地建物取引士と比較してみます。宅地建物取引士は、合格率が15%と測量士補よりも難易度の高さがうかがえます。ただし、宅地建物取引士試験の受験者は20万人程度であり、そのなかでの15%の合格率であることを加味する必要があるでしょう。
一般的に受験者が多い試験ほど合格率が低くなる傾向です。受験者が多いなかにおいても合格率が高いのは合否判定が相対方式(一定の点数を取ったら合格という方式ではなく、上位◯◯%を合格にする方式)となっています。明確な合格基準が存在しないことも合格者を多くだしている要因でしょう。
このように、測量士補は他の資格に比べて、しっかりと対策をすることで合格しやすいといえます。特に測量士や土地家屋調査士よりも、取り組みやすい資格ではないでしょうか。
測量士補試験の受験方法
測量士補試験の受験資格などを一覧にしてみました。以下の表をご覧ください。
試験申込期間:例年1月上旬から1月下旬
試験日:例年5月中旬ごろ実施
合格発表:例年7月上旬
受験資格:年齢、性別、学歴、実務経験などの制約なし
受験手数料:2,850円
試験会場:北海道、宮城、秋田、東京、新潟、富山、愛知、大阪、島根、広島、香川、福岡、鹿児島、沖縄
上記において、特に試験申込期間が限られているため、計画的に準備を進める必要があります。受験手続きに必要なものもご紹介しますので、滞りなく準備をすすめましょう。
受験に必要なもの:受験願書、受験料分の収入印紙などを貼り付けた写真票など、申し込み用封筒
身体上の障害等に係る特別措置の希望者:受験願書の提出前に国土地理院総務部総務課まで必ず照会すること。
団体で受験を申し込む場合:個人別の受験願書などが入った指定の申込用封筒を一括し、必ず志望者一覧表を添付して簡易書留郵便で送付する。
以上の点も確認したうえで測量士補の試験に申し込んでみてください。
参考:令和4年測量士・測量士補試験について(受験案内)
まとめ
測量士補は測量士が作成した計画・企画をもとに測量業務を行います。国家資格のひとつであり、試験の合格率は30%台です。試験対策をしっかりと行えば十分に突破できると考えられます。
測量士や土地家屋調査士など他の資格への足掛かりとして、測量士補の資格取得を目指すなど、キャリアプランも描けます。試験は毎年5月に実施されますので、試験の申し込みから受験、資格取得後の登録まで滞りなく行いましょう。
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