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2022.9.15

心身ともに楽ではない建設職人の現場仕事 メンタルヘルスを守るために社長ができることは?

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「建設業で大変なこと」というと身体面の過酷さをイメージする人が多いかもしれませんが、メンタルヘルスも決して無視できる要素ではありません。身体と心は、互いに影響し合っています。

今回は主に法人に向けて、メンタルが不安定になることによる影響や職人たちのメンタルヘルスを守るためにできることを考えていきたいと思います。

建設現場におけるメンタルヘルスの現状

建設業界で起こる精神疾患は、決して少ないとは言えません。
厚生労働省がまとめた令和3年度の労災補償のデータによると、精神障害の請求件数の多い業種で建設業が5番目に多いという結果になっています。*1
支給決定件数(業務上疾病と認定され支給が決定したもの)の多い業種でも、建設業が5番目に多いという結果です。*2

引用)厚生労働省 「令和3年度 過労死等の労災補償状況 別添資料2 精神障害に関する事案の労災保障状況」

引用)厚生労働省 「令和3年度 過労死等の労災補償状況 別添資料2 精神障害に関する事案の労災保障状況」

仕事による強いストレスによって、多くの精神障害が起こっているということが分かります。
精神障害を患った人全てが請求するわけではないので、この数字より多くの人が精神障害を患っている可能性もあるでしょう。

精神障害といっても様々ありますが、きちんと基準があります。
認定基準の対象となる精神障害とは、国際疾病分類第10回修正版(ICD-10)第5章「精神および行動の障害」に分類される精神障害です。

分類にはF0からF9まであって、認知症や頭部外傷などによる障害(F0)およびアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。

仕事で発病する可能性のある代表的な精神障害は、うつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)です。*3
急性ストレス反応とは、生死に関わるような強烈な出来事が起きたあとにその出来事を鮮明に思い出したり、不安や緊張が続いたりすることをいいます。

メンタルが不安定になる要因とは

私たちは日々いろいろなストレスにさらされているので、メンタルが不安定になる要因をひとつに限定するのは難しいところもあります。
ここでは、建設業の現状や特徴から、どのようなことが要因となる可能性があるのか見ていきましょう。

長時間労働、出勤日数の多さ

以下のグラフは、国土交通省がまとめた実労働時間及び出勤日数の推移を表したものです。
2016年度の年間実労働時間を見てみると、調査産業計では1720時間なのに対し、建設業では2056時間と336時間多くなっています。

年間出勤日数の推移も、調査産業計は222日ですが建設業では251日と、29日出勤日数が多いことが分かります。*4

労働時間が長く、出勤日数も多いと、当然心身共に休める時間が少なくなってしまいます。

引用)国土交通省 「建設業における働き方改革」

過酷な労働環境による身体的負担

建設業の業務内容は様々ですが、現場で働く職人は体力勝負であることも多いようです。
真夏や真冬の屋外作業、足場の不安定な場所での作業など、身体を酷使して働く場面も珍しくありません。

冒頭でもお話ししましたが、身体面での負担は精神面にも悪影響を及ぼします。
例えば、腰痛を感じている職人がいるとしましょう。

痛みがあると、立ったり座ったりだけでなく、中腰の姿勢もつらくなるので、以前のようにてきぱきと作業をすることができません。
そうなると、思うようにいかないことに対していらだちを感じ、精神的ストレスにつながります。

人間関係に関する悩み

建設業は、多職種が協力して働くため、チームワークが必要になります。
その職種によって、価値観や主張が異なる場合もあるでしょう。
そこをすり合わせながら同じゴールに向かって進めていくため、コミュニケーションスキルも大切です。
良好な人間関係を築くうえで、上司との関わりが難しいと感じる人もいるかもしれません。

これは建設業に限ったものではありませんが、ひとつデータを紹介します。
厚生労働省がまとめた精神障害の出来事別決定及び支給決定件数一覧によると、具体的な出来事で「上司とのトラブルがあった」が令和3年度では451件と最も多く、次いで「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が242件でした。*5

自分よりも立場が上である上司に対して、悩みや疑問点があっても言いづらかったり、強い態度を見せつけられて萎縮してしまったりという状況があるのかもしれません。

また、「パワーハラスメント(パワハラ)」という言葉は聞いたことがある人がほとんどだと思いますが、具体的にどのようなことがパワハラに当たるのでしょうか。

厚生労働省では以下の6つを紹介していますが、これに該当しないからといって問題ないというわけではありません。

・精神的な攻撃
・身体的な攻撃
・過大な要求
・過小な要求
・人間関係からの切り離し
・個の侵害*6

メンタルが不安定になると仕事にどのような影響を及ぼすのか

では、実際に精神的に不安定になった場合、仕事にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

作業効率の悪化

精神面に負荷がかかると、身体が緊張し、思うように動けなくなってしまいます。
また、脳の血流が少なくなることで思考力が低下し、作業効率の悪化につながります。

離職する職員の増加、人員不足

精神的ストレスが長く続けば、離職を考える人が増えます。
そうすることで人員不足に陥り、現場の負担は一気に増加します。

離職は、職場にとってダメージが大きいものです。
人員不足は、採用を増やせばすぐに解決できるものではありません。
一人前になるためには、仕事のノウハウを教えたりトラブルを一緒に解決したりと、ある程度の時間がかかります。
現場で働いていた職人が辞めることで他の職人の負担が増加し、さらなる離職を招く可能性もあるでしょう。

事故

申し上げるまでもなく、事故は職人の命に関わる重大な問題です。
それだけでなく、職場環境に問題はなかったのか、安全がきちんと確保されていたのかなど、会社としての責任も問われます。

以下の図にもあるように、ストレスによってホルモンバランスが崩れ、脳機能が低下することで集中力や注意力も低下し、事故が起きやすくなります。

引用)厚生労働省 「建設現場のメンタルヘルスと職場環境改善」

ストレスやメンタルの不安定さは、個人だけの問題ではありません。
職場全体として、職人一人ひとりの状況を把握し、どのようにしたら安定したメンタルで働けるのか考える必要があります。

職人のメンタルヘルスを守るためにできること

建築業の特徴を踏まえたうえで、職人のメンタルヘルスを守るためにはどのような対策ができるでしょうか?

職人のメンタルの状態を把握する

まず、現場で働く職人が何に困っているのか、どのようなことに不安を感じているのか把握する必要があります。

普段の様子から察したり、「最近どう?」とさりげなく声をかけてもいいかもしれません。ただこれは、日頃から良好な関係性を築いているからこそできることです。そして相手が遠慮して、率直に気持ちを話せないこともあります。

そんなときに活用できるのが、建災防(建設業労働災害防止協会)が普及に取り組む「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」です。

「建災防方式健康KY」とは、睡眠、食欲、体調に関する3つの問いかけを職長から各作業員に毎日繰り返し行い、日々の体調の変化を把握します。

「無記名ストレスチェック」とは、現場に従事する元請社員、作業員全員が集合する場で一斉に実施するもので、チェックリストの回答をもとに職場環境の改善につなげるものです。*7
これらは任意の取り組みですが、法定の取り組みと併せて活用することで、より一人ひとりが働きやすい職場に改善できる可能性があります。

十分な休息を確保する

心身ともに健康を維持するためには、休息が欠かせません。
休むことによって作業が効率よく進むので、しっかり休息をとることで好循環が生まれることが期待できます。

無理なスケジュールを組まない、十分な人員を確保する、残業が発生しないような作業工程を考えるなど、できるところから進めてみてください。

コミュニケーションを円滑にする

上司と部下という立場は、仕事を進めるうえで必要な役割ですが、それが悪い方向にいってしまうとコミュニケーションがとれなくなります。

業務では、しっかりと問題点を指摘しなければいけない場面もあるかと思います。
そんなときも人格を否定するような言葉を言わない、そのときの部下の状況を想像するなどの配慮が必要です。
また、休憩中や終業後は雑談もしながら「人と人」として付き合うと、よりよい関係性へのきっかけになります。

まとめ

職人のメンタルヘルスを守ることで、作業効率が高まったり、事故防止につながったりします。
さらに、離職防止や人員確保ができ、時間と気持ちに余裕が生まれます。

現場にはそれぞれの事情があって、急に職場環境を改善するのは難しいかもしれません。
しかし、一人ひとりが改善に向けて意識できることはあると思います。
職人のメンタルヘルスを守るため、できるところから始めていきましょう。

以下の記事では頑張っている建設業の皆様のさまざまな悩みについて解説しております。

建設業でこんなお悩みありませんか?あなたに助太刀をおすすめする理由

【参照サイト】
*1
参考)厚生労働省 「令和3年度 過労死等の労災補償状況 別添資料2 精神障害に関する事案の労災保障状況」
*2
参考)厚生労働省 「令和3年度 過労死等の労災補償状況 別添資料2 精神障害に関する事案の労災保障状況」
*3
参考)厚生労働省 「精神障害の労災認定」
*4
参考)国土交通省 「建設業における働き方改革」
*5
参考)厚生労働省 「令和3年度 過労死等の労災補償状況 別添資料2 精神障害に関する事案の労災保障状況」
*6
参考)厚生労働省 「NOパワハラ 事業主の皆さまへ」
*7
参考)厚生労働省 「建設現場のメンタルヘルスと職場環境改善」

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文/浅野すずか
フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた記事を執筆。

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