イチコロとは、「いちころ仕上げ」のことで、塗装業や左官業の業界用語として使われている言葉です。数回塗り重ねる工程がある塗装や左官の作業を、一回で仕上げるという意味を持っています。「一発仕上げ」と呼ぶこともあります。

通常の塗装工事で、下塗り、中塗り、上塗りという工程を重ねるのは、塗料の密着効果を高めるためです。しっかりと塗り重ねることで剥がれを防止します。厚く塗って1回で済ませればいいというわけではないのです。左官仕上げには、モルタル、漆喰(しっくい)、珪藻土、聚楽(じゅらく)などがありますが、仕上げを左右するのは下地作りと言っても過言ではありません。やはり下塗り、中塗り、上塗りという3工程が必ず必要になります。

イチコロとは、一般的には「たった一度で心をつかまれる」「一瞬で相手を負かす」といった意味があります。いちころ仕上げの由来がここから来ているとすれば、「すばやく」「無駄なく」1回で仕上げるという意味になるでしょう。しかし実際のところ、1回で塗装や左官を仕上げるということは、まずありません。DIYでペンキを塗るのとは違うのです。コストを抑えるための苦肉の策だとしても、簡単に剥がれてしまっては本末転倒のため、いちころ仕上げはなるべく避けることが賢明です。