電着塗装とは、水溶性塗料に直流電気を流して塗装する手法です。アクリル樹脂やエポキシ樹脂といった電着塗料の粒子は、水の中で+イオンまたは-イオンとなって溶けだしています。そこへ+または-電極につないだ塗装目的物を浸して通電すると、塗料が+と-の間で移動する電気泳動という現象が起こり、塗料が目的物に付着します。これが電着塗装の原理です。そのため塗装できるのは電気を流せる金属であり、木材やプラスチックなどには利用できません。

電着塗装には、塗装したい目的物の電極を+にする「アニオン電着塗装」と、-にする「カチオン電着塗装」の2種類があります。アニオン電着塗装は古くから用いられている手法です。安定性に劣る側面がありますが、豊富なカラーバリエーションがあります。カチオン電着塗装は密着性が良く、防食性や強度が高い反面、色は黒や灰などに限られます。電着塗装のあとには水洗いを行い、180〜230度の高温で焼付乾燥します。

電着塗装のメリットは、均一な膜厚で塗装できること、少ない塗料で済むこと、さびにくいこと、水性のため火災や大気汚染の危険が少ないことが挙げられます。カチオン電着塗装は、自動車塗装の下塗りや建材塗装といった大量生産に広く採用されています。デメリットとしては、大型の設備が必要なためコストがかかること、紫外線で劣化しやすいこと、不純物による不具合が生じる場合があることなどです。