実効温度差(ETD)とは、空調設備の設計や、外壁の目地設計を行う時に使われる値です。「温度差」とは、室内と室外の差を指しますが、実際にはコンクリートなどの熱容量が大きい部材は、外から内へ熱を伝えるまでに時間がかかります。そのタイムラグ(時間の遅れ)を考慮に入れて設定された「仮想の数値」が実効温度差です。
空調設備の設計には、熱負荷計算が必要です。室温を快適に保つためには、人間や照明、電化製品などから発する熱はもちろん、屋根や外壁、窓ガラスなどを通して外から伝わる熱を考慮しなければならないからです。この熱負荷計算に壁タイプ別に設定された「実効温度差表」を用いれば、計算を簡略化できます。
また実効温度差は、目地を設計する際にも用いられます。外壁材にカーテンウォール(アルミ・ガラス・プレキャストコンクリート製)や金属製パネル、ALC板が使われる場合、または笠木に金属やコンクリートが使われる場合の目地設計です。目地は温度の変化で動く(温度ムーブメント)ため、シーリング材の幅や深さの寸法を決めるには、実効温度差を用いた計算を行い、温度ムーブメント値を求めることが必要です。実効温度差は、部材の色調(明色か暗色)や、使われる場所(外壁か笠木か)によって値が変わります。