降伏とは、鉄筋など金属材に力を加えることにより現れる現象のこと。
例えば鋼材に力を加えた場合、ある点を境に弾性限度を超えてひずみが急激に増した状態となる。その状態のことを降伏、降伏が現れる点を降伏点、降伏が起きる直前に加えられた単位面積当たりの力を降伏応力と呼ぶ。
降伏が起きている時、最大の応力が加えられている点を上降伏点、最低応力の点を下降伏点という。建築の実用上では、上降伏点が弾性変形の最大基準の応力として利用されている。
降伏点に至る前に力を取り除くと元の形に戻る性質を弾性と呼ぶ。一方で、力を加えて生じた変形に降伏が現れて力を取り除いても変形が残る性質は塑性。弾性と塑性両方の性質を持つことを弾塑性といい、建築物に使う構造材料には弾塑性の性質を持つものが多い。
鉄骨造の建築物においては、耐震性を確保するために、建築物で使用される鋼材の変形能力向上が重要であるとの認識が高まってきた。よって、降伏比や降伏強度を低く抑えた低報復比鋼材が使用されてきている。
建築物の崩壊を防ぐため、建材が降伏しないよう建築物を設計しなければならない。ただし、降伏強度ギリギリだと万が一の降伏を防げないため、一定の安全率を見込んで設計するよう求められている。