ダクタイルとは、個体物質の力学的特性の一つで材料が破断するまでの変形量が大きく延ばしやすく、さらに粘り強いという状態を示す延性(えんせい)を示しています。英語でダクタイルと呼ばれます。
鉄鋼で炭素含有率の高い鋳鉄(ちゅうてつ)がありますが、溶解温度が低く鋳造しやすいことが特徴で、固まる際に炭素が膨張して体積の収縮を補う働きをします。
しかし、鋳鉄が固まる際に炭素が結晶化しサツマイモ状のグラファイト(石墨、黒鉛)となることで、応力が集中しやすく脆いという弱点がありました。
1948年、非鉄元素であるCe(セリウム)を加えることでグラファイトをサツマイモ状から球状化させることができ、翌年には安価なMg(マグネシウム)を添加したダクタイル鋳鉄(FCD、Ferrum Casting Ductile)が開発され、低コストで強靭性のある鋳鉄が生まれました。
このダクタイル鋳鉄の特徴は、肉厚の製品には不適で、振動を吸収する減衰能力を持たない一方で、引っ張り強さ延性に優れ、ねずみ鋳鉄(普通鋳鉄)の数倍の強度と粘り強さ(靭性)に優れていることです。この特徴を活かし自動車部品や水道管(ダクタイル鋳鉄)などに採用されています。