引張は、部材を外側に引っ張って力を受けること、材を引き延ばすように働く力のことです。一般的には、単に引っ張る力という意味で用いられることもあります。しかし、物理学では平面の物体において引っ張り合う垂直応力と定義されています。物を引っ張ると力を釣り合わせるために物の内部に力が生じ、そのときに垂直方向に加わる力のことを引張力と呼びます。

また、相対語は「圧縮」です。材料の両端から中心に向かって軸方向の力をかけることを指しています。力が材料にかかることを意味しており、かかる力は「圧縮力」といいます。曲げ力が働く場合、弓状になった凸部では引張が働いており、凹部は圧縮になっている状態です。アーチは、圧縮力だけで成り立っている構造体です。一般的に、引張力を受ける部材より圧縮力を受ける部材の方が部材の断面積が大きくなります。

その他、引張強度は供試体を引っ張った時に掛けた荷重に対して、垂直断面積で割って求める数値のことです。面積あたりの強度のことを指しています。たとえば、コンクリートの引張強度は圧縮強度の10分の1以下です。鉄筋コンクリート造における引張耐力は、鉄筋のみに頼っているといっても過言ではありません。コンクリートは圧縮には抵抗しますが、引張には弱いのが特徴です。