「揚程」(ようてい)という言葉は、建築業界では主に2つの場面で使われている。
もともとは、ポンプが汲み上げることが可能な水の高さを揚程という。ポンプヘッド・水頭とも。流量(吐き出し量)と並び、ポンプの能力を示す指標の1つとなる。

ポンプの吸込み水面から吐出し水面までの鉛直距離を実揚程といい、これに管内などの摩擦損失水頭を加えたものが全揚程となる。通常では全揚程のことを単に揚程と呼んでいる。揚程はメートルなどの単位で表される。
また、つり具の垂直移動距離のことも揚程と呼んでいる。建築現場ではこちらの意味で使われることが多く、特にクレーンに対して使われている。

地上からフックまでの上限の高さのことを地上揚程という。フックを最大に巻き下げた時の地表面から地下の下限までの垂直距離は地下揚程。ブームの長さや角度を最大にしてフックを巻過警報装置に接するまで巻き上げた時の、地上からフックの高さまでが最大地上揚程となる。
クレーン作業による事故が多発している。巻過防止装置や巻過警報装置が作動している場合、揚程が足りないのを理由に装置を解除するのはとても危険である。クレーンの性能や機能をしっかりと把握し、危険が予測される無理な作業は行わない。