鏡天井(かがみてんじょう)とは、天井材を支える縁を用いず1枚の平らな板のみで出来た天井のことを言います。杉(すぎ)や檜(ひのき)、欅(けやき)、桐(きり)の柾目(まさめ)や中杢目(なかもくめ)の一枚板を張った天井で、部材の大きさから面積の小さい床の間や床脇などに用いられます。

従来の日本建築では吊り木に竿縁や格縁を設け天井材を取りつけますが、鏡天井にはそれらの縁が無い工法となります。これは鎌倉時代に禅宗が布教され、仏教寺院建築に用いられた禅宗様式によるものとされています。当時の中国(宋)の建築様式を模したもので、唐様(からよう)とも呼ばれていました。代表的なものとして鎌倉の円覚寺舎利殿があります。15世紀前半に建築された大平寺仏殿を16世紀に移築された建物です。仏殿内部の中央には仏を祭る「厨子(ずし)」を設置する「須弥壇(しゅみだん)」が配置されています。その上部の天井は四角く平らになった鏡天井となっています。

江戸時代以降にはそこに雲龍の絵が描かれることもあり、特別な天井であることが分かります。現代の建物の天井では天井裏の野縁(のぶち)に石膏ボードを取り付け、クロスを貼って仕上げて縁が見えないものがありますが、鏡天井とは言いません。