エキスパートシステムとは、人工知能(AI)の技術を利用したコンピューターシステムです。特定分野の専門知識を収集し、データ化して蓄積。システムがデータを読み込み、人間の代わりに問題解決に向けた推論、判断を行います。エキスパートシステムを利用すれば、その分野の知識がない人でも専門家(エキスパート)と変わらない答えを導き出すことが可能です。

エキスパートシステムは通常のプログラムとは異なり、「推論エンジン」と「知識ベース」の2つから成る構造です。知識ベースには、人間の高度な知識、事実、規則などを「○○ならば××である」といった単純なルール形式に置き換えて蓄積されています。推論エンジンは人間の頭脳にあたり、知識ベースに基づいて推論し、結論を出力します。この2つの構造が分離しているため、知識ベースを入れ替えれば、多様な分野の推論を行うことができるのです。

エキスパートシステムの開発は1960年代から行われていましたが、膨大なデータをルール化して入力するのは人間の手であったこと、ハードウエアの能力が低く、インターネットやクラウドサービスも存在していなかったことから、実用化には至りませんでした。しかし人工知能(AI)技術の進歩により、現在ではさまざまな業種でエキスパートシステムの導入が進んでいます。建築・土木の業界でも、専門的な知識を設計に反映するために活用されています。