「持ち送り」とは、水平に張り出したものを支える部材のことである。「持ち送り積み」や「持ち出し」などともいう。特に木材を支える「持ち送り」は「梁受け」と呼ぶこともある。

梁や庇、出窓や棚など、建築物において水平に突き出た部分の荷重を持ち送りで支える。また、持ち送りは補強材としてだけでなく、装飾としても用いられる。そのため、持ち送りは金属製や木製などでさまざまな形状の物が作られ、彫刻を施すなどの技法が使われている。
持ち送りと同様、腕木や肘木も水平に張り出した部材である。肘木は他の部材に貫通させて接合し、腕木は電線や看板を上から吊って支えるなどの役割がある。それらに対して、持ち送りは突き出た物を下から支えるようにして取り付ける。

持ち送りの技法を用いた「持ち送りアーチ」という構造がある。左右から徐々に石材を張り出すように積んで並べていき、アーチの頂点でつながるようにする。通常のアーチ構造とは異なるため、完全な自立支持構造にはならない。
石の構造物が多い西洋では、持ち送りに該当する部分を「コーベル」と呼んでいる。古代の建築物にもコーベルアーチの構造が使われていた。日本でも「コーベル梁」「コンクリートコーベル」などという。