渡り顎とはひとつの木をもうひとつの木に直交させ乗せる日本古来の仕口方法のひとつです。木どうしに溝を作り、そこを互いにはめて組んでいきます。上になる木を男木、下になる木を女木と言います。現代では梁や柱をボルトで引っ張り、接合部がずれたり抜け落ちないようにしている方法が一般的です。ボルトで締めると木材の乾燥収縮・膨張といった現象で長い目で見ると、ボルトが緩んでくる可能性があります。それに対して渡り顎は木材だけで組み上げていけるので、梁が抜け落ちたりする心配がありません。渡り顎という工法は、簡単に言うと「梁をかけ渡していく、木材を金物ではなく込栓で接合し組んでいく」工法です。

この方法は下になる木の断面欠損が最小ですみ、なおかつ上になる木の重みを下の木ですべて受けることができます。ただし下からの押し上げる力には抵抗できないので、釘を打つことで固定しなくてなりません。二階根太や梁の仕口に使うことが一般的です。

似た仕口方法に「渡り欠き」があります。この仕口は男木だけに溝を作り、女木を大入れにします。女木の強度は大きく変わらないのですが、男木の断面欠損が大きく繊維が大きく切れます。そのため男気木の強度が落ちるため「渡り顎」を用いた方が良いと言われています。