曳家は、建物を解体しないでそのまま移動することを指しています。「家引き」、「曳屋」と呼ばれることもあります。具体的には、家やビル、お城などの建築物や樹木などをそのままの状態で移動する建築工法です。道路の拡張、土地区画整理などにも用いられます。曳家業界は、「解体」、「建築」、「保存」の建設3分野のうち、保存の分野を受け持っている業界です。

独特の技術と経験が必要となる仕事です。使う道具や機器自体も重いため、重労働といわれています。また、工法が3種類あります。「姿曳移動工法」は、一般的な工法です。鋼材あるいは角材で建物を下から支えて移動させます。木造住宅に向いている工法です。床下工事なので生活に影響ないのが特徴です。「基礎共移動工法」は、基礎部分も含めて建物を移動します。

基礎部分から持ち上げるので、地盤を掘り下げます。鉄筋コンクリート造や、ツーバイフォー住宅を移動させるのに用いられます。「腰付移動工法」は、敷居より上に鋼材を組んで持ち上げます。主に、神社、仏閣、木造住宅に用いられます。基礎部分を新築と同じように作ってその上に設置するため、強度を下げないという特徴があります。その他、全国的に見ると需要が多いとはいえず、業者の数もあまり多くありません。よって、工事中の様子が一般の人の目に触れることが少なく、社会に認知されにくい業界です。しかし、震災復旧工事や弘前城の保存工事で話題となりました。