撥(ばち)は、平行ではない状態のことを意味しています。撥の形が末広がりになっているところから、本来はあるべき線が広がっているという状況を野丁場では「撥になっている」と表現します。野丁場は、鉄筋コンクリート造の建物工事など、住宅以外の大規模な工事のことで、以前より施工技術が高い傾向にあります。建築においては、一般的に部材が平行で取り付けられるケースが多いのが特徴としてあがります。しかし、わざと平行を崩しているケースもあり、平行ではない状態は特別な意味があることが多いです。また、バチル、バチってるという言葉もあり、壁などが凹凸だったり、ずれていて真っ直ぐになっていないことを表します。
撥は、精度を表す言葉として建築現場で使用されますが、その他にも精度を表す用語として江戸時代に発達した直角を意味する「矩」や、一直線になっている状態を表現する「通り」、水平を表す「陸」などがあります。いずれも同じようなシチュエーションで使われる場合があり、使い分ける際には意味をしっかりと理解しておく必要があります。また、同じ漢字を使用する言葉に「撥水」がありますが、水をはじくことを指す言葉で撥とは意味が異なるので注意が必要です。