建築業界で役物(やくもの)とは、特定の場所や用途だけに使用される、特殊な形状の建築資材や部品を指すことが多い。役物の反対で、定尺のままのレンガやブロックなどは「真物」(まもの)と呼ぶ。タイルの場合は、役物タイルに対して「平物」という言葉がある。

建築において、特に役物の種類が多いのは屋根瓦である。わかりやすい例は鬼瓦。主に装飾を目的とし、他の瓦とは明らかに形状が異なる。

切妻屋根の妻側先端部分であるケラバに使用される、ケラバ瓦も役物の一種である。軒先に使用する軒瓦も役物。その他にも、熨斗瓦(のしがわら)・袖瓦・冠瓦・唐草瓦などが役物瓦と呼ばれる。

また、タイルにも役物が多い。端の部分をきれいに見せるために側面の角を取ったり色を付けたりするタイルを面取りタイルというが、それも役物タイルの一種。1辺の角が取れて丸まった片面取りタイルや、2辺の角が取れて丸まった両面取りタイルもある。
コーナー部分で使用するタイルも役物となる。短辺を直角にする曲がりタイル(標準曲がりタイル)や、長辺を直角にするまぐさタイル(まぐさ曲がりタイル・屏風曲がりタイル)がある。
それら以外にも、造作材などに用いる木材を役物と呼ぶことがある。節の少ない良質の木材が役物柱として使われている。