スリットは、建物に設けられた細い隙間のことです。スリットの目的は、まず建物の通風や採光が挙げられます。建物の耐震性を高めるために設けることもあります。通風や採光は、窓でもできることです。しかし、状況によっては、それが難しい場合があります。例えば建物が人通りの多い道路に面している場合です。窓をつくれば、通行人の視線が気になります。それで窓のない一面の壁にすると、風も光も入らなくなります。スリットなら視線を遮りつつ、通風や採光ができるので安心です。
耐震目的の場合、耐震スリットや構造スリットと呼びます。スリットで耐震性が高まるのは、壁や柱が柔軟になるためです。スリットのない壁と柱は、ある程度の力には耐えられます。しかし、大きな揺れや水平方向の揺れは、柱に負荷が集中します。すると柱は、負荷に耐えられずに壊れて建物が倒壊します。一方でスリットがあれば、壁は柔軟に動けます。柱も壁と切り離されたら、曲がることができるでしょう。つまり、スリットが生んだ柔軟性が、建物を守ります。しかしながら、スリットを入れすぎると、壁の耐力が低下します。そのために、弱い地震にも耐えられなくなれば本末転倒です。建物の強さと柔軟性は、バランスが重要です。
続いて、スリットに関わる仕事について見ていきましょう。新築なら、建物の設計をする建築士、施工をする職人がいます。既存の建物に施工するならリフォーム会社の営業担当者や職人です。スリットの工事については、誰がやっても同じではありません。設計通りにスリットが入っていない施工不良も過去に起きています。スリットに関わる仕事は、人の質で仕上がりが変わります。